金継ぎ(きんつぎ)〜日本古来の技法とその魅力とは

今、一部のうつわ好きの間で密かなブームになっている「金継ぎ(きんつぎ)」。

その成り立ちや歴史をひも解いてみたいと思います。

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■「金継ぎ」とは

『金継ぎ』とは、壊れてしまった陶磁器を漆(うるし)の力を使って修復する日本の伝統技法です。

ウルシ科のウルシノキやブラックツリーの木から採れる「漆」は乾燥すると無害で非常に強力な硬化作用を持ちます。
天然の強力接着剤のようなものです。

日本では、そんな漆の性質を使い、古くは9000年前の縄文時代から器の接着、装飾などに使用していました。
一説には漆を使い始めたのは日本が最初と言われています。

そんな漆での器の修復をさらに発展させたのが「金継ぎ」です。

■金継ぎの歴史

金継ぎが生まれた背景には諸説ありますが、今から400年以上前・安土桃山時代から江戸時代初期にかけての『茶の湯』の時代と言われています。
千利休が大成した「茶の湯」は、当時の大名や大商人など富をもった権力者の趣味であり文化でした。

中でも織田信長は、大の茶道具コレクター。
さらに「茶の湯」を政治に利用します。

信長は家臣たちに自由に「茶の湯」を開くことを禁止。
戦いで大きな功績を残した家臣にだけ、良い「茶道具」を与え、茶会開くことを許可したのです。

織田信長

当時の大名たちは茶会を開くことは大きな憧れ。
褒賞としても信長からもらった「茶道具」は富と権力の象徴です。

そんな世界に1つしかない大切な茶道具ですから、壊れてしまった時の元に戻したい気持ちは計り知れない思いがあったでしょう。

そんな時代の中から、修復技術「金継ぎ」は生まれました。

■金継ぎの魅力

1.日本独特の美意識

金継ぎは日本独特の美観の元に作られています。
それは”傷跡をあえて金で装飾し目立たせ、それを美しいとみなすこと”です。

普通、傷跡というものは綺麗に見えなくしたいものですよね?

しかし金継ぎは「壊れた」という出来事も、物としてきちんと使ったからこその歴史。
堂々と表し、美しいものとみなそう。
そんな考え方をします。

例えるなら、純粋無垢な人も良いけれど、喜びや悲しみ、様々な人生経験を積んだ人も同じくらい美しい。
という感じでしょうか。

これは禅の精神に基づいた世界でも類をみない美意識です。

2.金継ぎの景色

金継ぎは偶然出来た傷を、漆と金で修復します。
狙ってつけた傷ではないため、完成するまでどんな出来栄えになるか分かりません。

そんな金継ぎ完成した跡を「景色」と呼びます。
ヒビを雷のように見たり、欠けを継いでポテっとした跡を柿に見立てたり・・・

昔の人は金継ぎの完成を楽しみにし、出来た後はどんなものに見えるかを、想像力をめぐらし例えあっていたそうです。

このように「金継ぎ」とは、器を直すだけではなく、日本独自の美意識と技術が込められた「伝統文化」でもあります。

器を直して繰り返し使う。
さらに壊れた跡を美しいとみなす。

そんな考え方を日本人は400年以上前からしていたなんておもしろいですね。
世界に伝えていきたい日本文化の1つではないでしょうか。


[文/ 金継ぎ暮らし]
https://kintsugikurashi.com/

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