小石原焼 マルワ窯
太田富隆 (おおたとみたか)
ブルーやレッド、印象的な色彩とフォルムを実現させた技巧派
黒田藩三代光之公が築いた最初の藩用登り窯の遺跡が、陶房の敷地内にある「マルワ窯」。太田富隆さんはその3代目です。
キャリアは窯を継いで25年のベテランですが、作風は伝統的というよりは新しい小石原焼という印象が強いです。
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世界の陶芸家たちから学んだ独自の技術
富隆さんは有田窯業大学を卒業し窯元に帰ってきてから10年間、修行として先代についてみっちりと伝統的な小石原焼を叩き込みました。そのかたわら、終業後に自分の作品を作陶し、全国の展覧会に応募。その中で出会いが起きました。
20歳で大阪民芸館展に出展したとき、その作品を見たアメリカ人陶芸家のリック・アーバン氏が、わざわざ訪ねて来たのです。彼はそのまま1週間滞在して小石原焼を学んで行きましたが、その縁で今度は富隆さんがリックさんを訪問。
半年の修行で、薄く軽い焼き物を作る独自の方法や、ハンドル文化(柄の付け方)を吸収。その後イギリスにも渡り、バーナード・リーチの孫弟子の元で学びました。
帰国後「伝統は守っていくが、自分なりの新しい小石原焼を作っていこう」と富隆さんは考えるようになりました。新しいスタイルで物作りをしていく方向性は、この経験によって生み出されたのです。
「もともと様々なことをやってみたいタイプなんです。新しいことをやって見て、また伝統にかえることの繰り返しです。日の目を見ないものもたくさんありました」
シャープな形と光沢のある深い色が魅力的なうつわ
富隆さんのうつわで印象的なのは、鮮やかなコバルトブルーのお皿ですね。
「最初はブルーにはまっていましたが、4年ぐらい前から赤に取り組んでいます。色々試していたら、漆塗りのような深い赤が発色したのを偶然とらえることができたのがきっかけです」
まるで大河ドラマで見た信長軍団の甲冑のような色で、カッコがいいですね。
「この色は安定性が悪くて、窯から出して見ないと綺麗に出ているかわからないんです。この赤色がだんだん人気が出てきました」
そしてマルワ窯で形として印象的なのうつわは、朝顔のように開いた形の深さのあるお皿です。
「あれは女将が、こんなの作って欲しいっていって来たんですよ」
当時、お花の先生と定期的にコラボレーションしていて、その水盤として最初は考えられたとか。そして展覧会に出展するなどして現在の形に。
「この形を作るのには、ロクロの技術が必要なんです。下から立ち上がってくる部分から、途中で急に外側に広がっていく形なので、角度が大きく変わるから作っている間に壊れやすく、難しいです」
しかもこれを軽く、重ねられるようにロクロで作るのだからすごいですね。
最近はこの赤以外にも、黒・紺そして伝統色とは発色を変えた白で作品を展開している。
そしてこれらをまとめる形で『LINEAGE(リネージュ)』というブランドで発信を開始。
「リネージュというのは、窯跡から出てくる古い小石原焼にも見られる筋模様のことです。今でも刷毛目や飛びカンナなど伝統技法に引き継がれている、こういった條文様(じょうもんよう)を現代の生活にふさわしい新しい形で提案して行きます」
伝統技術を生かしながら斬新な色彩・造形を生み出して、確かな技術で使いやすいうつわとして新しい「用の美」を追求する「マルワ窯」。ショップは立地がいいので、「民陶祭」では外せない一軒ですね。
窯元名 マルワ窯(太田富隆窯) 窯主 太田 富隆 住所 福岡県朝倉郡東峰村大字小石原892-1 電話番号 0946-74-2248 営業時間 9:00〜17:00 定休日 不定休 駐車場 有り フェイスブック https://www.facebook.com/maruwakama
◯太田富隆陶歴
昭和44年 | 9月8日生まれ |
昭和63年 | 県立有田工業高校窯業科卒業 |
平成2年 | 県立有田窯業大学卒業 、マルワ窯に入る |
90年国際陶芸展 銀賞 | |
平成3年 | 米国リック氏と マーク氏のもとで半年間修行 |
平成6年 | 英国、故バーナードリーチ氏の足跡をたどり研修 |
平成7年 | 西日本陶芸展 文部大臣賞 |
平成8年 | 西日本陶芸展には以後4回入選 |
平成9年 | 長崎県知事賞 第1席長崎県知事賞 |
西日本陶芸展 福岡県知事賞 | |
西日本伝統工芸展 入賞 以後2回入選 | |
日本民芸展 労働大臣賞 | |
平成10年 | 第6回現代陶芸(めん鉢)大賞展 優秀賞 |
平成11年 | 日本陶芸展 入賞 |
九州山口陶磁展 第三席 | |
平成12年 | 西部工芸展 入賞 |
九州山口陶磁展 読売新聞社賞 以後1回受賞 | |
平成13年 | 日本陶芸展 入選 |
平成15年 | 西日本陶芸展 文部科学大臣賞 |
平成16年 | 西日本陶芸展 経済産業大臣賞 |
平成17年 | 日本工芸伝統工芸展 入選 日本伝統工芸会正会員に認証 |
平成18年 | 日本伝統工芸展 入選 |
平成19年 | 西日本陶芸選抜三十人展 出展 |
平成21年 | 日本伝統工芸展 入選 |
平成21年 | 九州国立博物館「工芸のいま伝統と創造」出展 |
平成22年 | 日本伝統工芸展 入選 |
平成25年 | 福岡県知事注文によりわら刷毛目壺を宮内庁へ献上 |
○「マルワ窯」のうつわが買えるお店
東峰ムラガールズ アンテナショップ『With+(ウイズプラス)』
福岡市中央区鳥飼3丁目7番21号
Tel: 092-741-5148
Fax: 092-720-9618
Open 10:00〜17:00
定休日 水・日
URL: https://withplus.jimdo.com/
○ギャラリー・ショップ(直営店)
「マルワ窯」のギャラリーショップは1年前に新築されたばかり(2017年現在)。道の駅の前という、大変便利な場所にあります。
気持ちのいい内装に、さまざまなうつわがディスプレーされています。
軽くて持ちやすい、マグカップには独自の技法が注がれています。
デザイナブルな形のうつわが色々あります。
カラーバリエーションが豊富ですね。
薄くて重ねやすいので、収納性がいいのも特徴。
一瞬の技で書き上げる指絵。技術が光ります。
入り口近くには、ちょうど取材日の前日に学校を卒業して窯元に帰ってきたご子息の作品が。小石原焼を学ぶのはこれからということですが、若い力がどのような風を吹かせるのか、これからが楽しみですね。
(取材・写真テーブルライフ)