日本の現代のスリップウェア  12選 ~日本で花開いた英国の古陶~

日本の現代のスリップウェア 12選

~日本で花開いた英国の古陶~

 

 引用画像:伊藤丈浩氏 instagram

世界で初めて日本で見出されたその魅力

スリップウェアとは、土に水を加えたクリーム状の泥(スリップ)で模様を描き、釉薬をかけて焼く陶器のことを言います。

スリップウェアについてのコラムはこちら

引用画像:伊藤丈浩氏 instagram

スリップウェアは17世紀のイギリスで本格的に登場しました。当時は日用雑器ではなく飾り皿や結婚式や洗礼式といった特別な機会に使われる記念品的なものが主流でした。緻密で装飾過多とも思えるうつわですが、本国イギリスではスリップウェアといえばこのような細かい装飾の飾り皿を指します。

画像:中川紀夫氏作(中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019 より)

やがて、18世紀に庶民が調理用に使うパイ皿としてのスリップウェアが作られるようになりました。日用雑器として無名の作家によるシンプルで抽象的な文様の素朴な風合いのうつわです。

イギリスでは飾り皿としての鑑賞用のスリップウェアが高く評価され、パイ皿としてのスリップウェアはほとんど評価されませんでした。

柳宗悦氏や濱田庄司氏といった、日本の民藝運動の創始者たちがこの雑器としてしか評価られなったパイ皿のスリップウェアの、生活に根付いた無名の作品の持つ素朴な風合いに、その美を見出しました。世界で初めてスリップウェアを評価したのは、彼ら日本人でした。

引用画像:柴田雅章氏作 (「芸術新潮」2004年4月号)より

本国イギリスの価値観をくつがえし、日本人のわびさびを美しいとする美意識が、その魅力を見出したことはとても感慨深いものがあります。

柳宗悦氏は、日本に渡来したスリップウェアがやがて多くの人に嘆願される日が来るのを信じると書いていたそうです。(出典:「炎芸術 スリップウェア」)

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram

そして、スリップウェアに再び魅せられた現代の作家の方々が、日本各地でその土地の土や釉薬を用いたり、日本の陶器のフォルムも融合させて、オリジナリティあふれた多彩なスリップウェアを作陶しています。

今静かなブームが起こっている、日本の現代のスリップウェアを紹介します。

1.柴田雅章
2.舩木伸児/布志名舩木窯
3.福間琇士/湯町窯
4.山本教行/クラフト館 岩井窯
5.井上尚之/小代焼ふもと窯
6.伊藤丈浩
7.齋藤十郎
8.十場天伸/つくも窯
9.中川紀夫/紀窯
10.太田剛速/まるた窯
11.芦澤和洋/陶芦澤
12.柳瀬俊一郎/陶房沙器

1.柴田 雅章(しばた まさあき)

引用画像:BEAMS JAPAN

日本のスリップウェアの第一人者といえる柴田雅章さんは兵庫県丹波・篠山市に窯を開いています。東京生まれで大学の理工学部で化学を専攻。日本のやきもの古丹波に惹かれ、卒論のタイトルは「古丹波の化学的研究」でした。

古丹波を目指して作陶と励んでいた時に「古道具や坂田」で開催された「スリップウェア展」(1981年)でスリップウェアに出会ってから、その魅力に惹かれ、英国のスリップウェアを真似るのでなく、日本のスリップウェア、丹波のやきものとしてのスリップウェアを作ることをはじめました。

引用画像:「柴田雅章 クライヴ・ボウエン 二人展」ギャラリー・セントアイヴス

日本の六古窯のひとつである丹波焼には、白と黒の化粧土(スリップ)を用いた技法がありましたが、ろくろ成形後にスリップを装飾するとあの英国スリップウェアに見られる文様が生まれないため、試行錯誤したうえ、成形前にスリップ装飾をするという技法に辿り着きました。そしてその制作技法を美術雑誌やビデオで公開しました。

のちに若手の陶芸家の方々が日本でスリップウェアを手掛けるようになりましたが、柴田さんの影響も大変大きいものだといえます。

柴田さんが作るスリップウェアは、丹波の土と、丹波の木の灰(ストーブや風呂の薪にした灰)による灰釉(毒性のある鉛釉を使わず)を掛けて、登り窯で高温で焼成するという独自の「灰釉スリップウェア」を生み出しました。

引用画像:灰釉スリップウェア「丹波 柴田雅章 作陶展 2017」(阪急阪神百貨店)

柴田さんの自然そのものの持つ美を大切にした作陶スタイルは、温かい優しさが溢れたスリップウェアを作りだしています。

1948年東京都生まれ。

引用画像:知花くらら instagram

名称:柴田雅章
住所:〒669-2364 兵庫県篠山市鷲尾26
電話:079-552-5096

2.舩木 伸児(ふなき しんじ)/布志名舩木窯

引用画像:中目黒SML

舩木伸児さんは、かの民藝運動の創始者である柳宗悦氏、濱田庄司氏、そしてバーナード・リーチ氏が民藝運動の中でしばしば訪問したという、江戸時代後期より続く布志名焼の名家である布志名舩木窯の六代目を継いでいます。

布志名舩木窯は島根県松江の宍道湖の湖畔にあります。五代目の父は日本を代表するスリップウェア作家、舩木研兒氏です。

引用画像:yuki161 instagram

布志名舩木窯では島根県の松江で産出される来待石(きまちいし)を原料にした黄釉を江戸時代から使っていますが、スリップウェアにも黄釉が用いられとても明るく美しい色彩になっています。

引用画像:中目黒SML

伸児さんは、当初大学でデザインを専攻し、こちらの道を歩むつもりでしたが、父の研兒さんが病にかかり助けるために帰り作陶を始めると、陶芸に道に惹かれ、スリップウェアも作るようになりました。デザインを学んだ伸児さんだからこその従来のスリップウェアとまた違った雰囲気で可愛らしさや柔らかさ、華やかさを感じます。そして※(注)イッチン描きによる草文のような文様は伸児さんならではのスリップウェアです。

※イッチン描きとは:スポイトなどに釉薬や化粧土を入れ、少しずつ絞り出しつつ立体的に点や線を描く技法。

1960年島根県松江市生まれ。

引用画像:chihiro__ instagram

名称:舩木伸児/布志名舩木窯(ふじなふなきかま)
住所:〒699-0203 島根県松江市玉湯町布志名437
電話:0852-62-0710
営業時間:9:00~17:00(要予約) 不定休

 

3.福間 琇士(ふくま しゅうじ)/湯町窯

引用画像:Begin

黄釉がとても優しく温かく心を包む布志名焼の湯町窯。福間琇士さんは島根県の玉造温泉駅からほど近い、湯町窯の三代目として作陶をしています。

湯町窯といえば、日本全国ファンがとても多い窯元です。ロングセラーとして今もなお入手が難しいといわれるエッグベーカーは湯町窯のアイコン的な存在になっています。

引用画像:Sharge(シェアージュ)

直火で使え、簡単に半熟卵が作れる陶器ですが、アヒージョなどのお料理にも使えて女性にも大人気のうつわです。湯町窯のエッグベーカーで作った目立焼きは格別の美味しさです。このエッグベーカーの温かい黄色い色彩は、島根県松江、宍道湖に栄えている布志名焼の特色とも言える黄釉です。そして、バーナード・リーチ氏直伝のスリップウェアの技法で作られています。中底に描かれた蜂のようなマークは湯町窯のトレードマークとなっています。

引用画像:moyais instagram

湯町窯のスリップウェアはリーチ直伝ではありますが、英国式ではなく日本ではイッチン描きと呼ばれる技法で作られています。民藝の持つ優しさを大切にしながら、現代に合ったうつわを作りたいという福間さん。湯町窯のうつわは日常生活を温かく彩ってくれます。

1941年島根県生まれ。

引用画像:shimicomdesign instagram

名称:福間琇士/湯町窯(ゆまちがま)
住所:〒699-0202 島根県松江市玉湯町湯町965
電話:0852-62-0726
営業時間:8:00~17:00(平日)/9:00~17:00(土日祝) 定休日なし

 

4.山本 教行(やまもと のりゆき)/クラフト館 岩井窯

山陰最古の岩井温泉のある鳥取県岩美町の山間に、山本教行さんのクラフト館岩井窯があります。民藝運動の舞台とも言える、島根県の出西窯で修業をしたのち、現在の地で独立、初窯を開きました。バーナード・リーチ氏との出会いで陶芸に本腰を入れるようになり、のちに英国フェアで見たスリップウェアに感銘を受けて作陶するようになりました。

引用画像:iwaigama instagram

引用画像:中目黒SML instagram

山本さんの作るスリップウェアは、手に入りやすい素材で、簡単な技法で作品を作るというスタイルで作られています。従来の黄と黒だけでなく緑釉を使ったりといった日本独自の色彩のスリップウェアを作っています。「日常の生活の中であたりまえすぎてそれほど気にならないのにそれでいて大切に思えるものがある。そういう物が焼けないかと思う。私が作ったというより生まれてきたと思えるものが焼けないかと念じてやまない。」(山本教行)

引用画像:iwawigama instagram

山本さんの土鍋シリーズも大変な人気を得ています。

引用画像:hasu.hana.a instagram

スリップウェアとともに山本さんの作るうつわには、丁寧に心を込めて暮らしをしたいという「民藝」の世界が広がっています。うつわファンの心をつかんで離しません。

1948年鳥取県生まれ。

引用画像:22M(インテリアブログ)

名称:山本教行/クラフト館 岩井窯
住所:〒681-0025 鳥取県岩美郡岩美町宇治134-1
電話:0857-73-0339
営業時間:10:00~16:00 (定休日 月・火 ※祝祭日は開館)
HP:http://www.iwaigama.com/
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5.井上 尚之(いのうえ なおゆき)/小代焼ふもと窯

中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

井上尚之さんは熊本県荒尾市の小代焼ふもと窯の二代目として、小代焼のうつわだけでなく、できないうつわはないといっても過言ではないくらい、幅広い技法で作陶しています。そのなかでも井上尚之さんのスリップウェアは日本の現代のスリップウェアを代表するうつわとなっています。

民藝 Another Kind of Art展

井上尚之さんは、かつて小石原焼、太田哲三氏に師事したのちに、ふもと窯の父、井上泰秋氏に師事。今ではありとあらゆる陶芸の技法で幅広い作風のうつわを作っています。

井上さんは小石原焼、太田哲三さんとの出会いがきっかけで、陶芸家を目指しました。陶芸家になりたいというより、太田田哲三さんの人物にに惚れて焼物をやりはじめたというエピソードは胸に響きます。

中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

井上さんの技のクオリティとバラエティ、そしてスピードは圧倒的で、日本で一番数多くスリップウェアを作っています。古来からの文様や作風を大切に受け継いでいる井上さん。「何百年経っても残るうつわになるように」、「一家にひとつスリップウェアあることがが当たり前のようになるよう広めていきたい」(井上尚之さん談)。

1975年熊本県生まれ。

引用画像:シャナナ熊本 instagram

名称:井上尚之/小代焼ふもと窯
住所:〒864-0166 熊本県荒尾市府本上1728-1
電話:0968-68-0456
営業時間:8:30~18:00 無休(店舗) 火曜定休(仕事場)
駐車スペース有 車50台(バス可)
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6.伊藤 丈浩(いとう たけひろ)

引用画像:中目黒SML instagram

スリップウェア作家としてもとても注目されている伊藤丈浩さんは、栃木県の益子に窯を構えています。小学校高学年の時に陶芸に興味を持った伊藤さんは益子の製陶所で働き始めたのち、アメリカにやきものを見に周遊した際にスリップウェアに出会います。のちに日本の作家や窯業地を巡り、2006年に栃木県益子にて独立しました。

伊藤さんのスリップウェアの魅力はまるでテキスタイルのような緻密でエレガントなスリップ文様にあると思います。成形前に平らな陶板の上に文様を描くというスリップウェアならでは工程を存分に楽しみ、薄い柔らかい化粧土を見事に交わらせ美しいグラデーションを創りげています。

伊藤さんの代表的な文様であるヘリンボーン柄。

引用画像:中目黒SML instagram

また、古伊万里の染付の「網文様」からヒントを得た「リボン」文様は初めてできたオリジナルの文様です。

引用画像:伊藤丈浩氏 instagram

「古陶からの恩恵に敬意を払いながらも、その渋みや静謐(せいひつ)さを求めるだけでなく、現代の食卓に合う明るく華やかなうつわを作りたい」(伊藤さん談:「スリップウェア」(誠文堂新光社)より引用抜粋)

1977年千葉県銚子市生まれ。

 

引用画像:ユナイテッドアローズ Store Blog

名称:伊藤丈浩
Blog:https://itomashiko.exblog.jp/
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7.齋藤 十郎(さいとう じゅうろう)

静岡県伊東市に登り窯を構える齋藤十郎さんは、熊本の小代焼と出会い、陶芸の道に進まれました。小代焼ふもと窯の井上泰秋氏、鳥取県岩井窯の山本教行氏に師事したのち、独立。スリップウェアを作りだしたのは10年くらい前からになります。

引用画像:遠近instagram

齋藤十郎さんといえばオーバル型のカレー皿がとても有名ですが、スリップウェアを作るきっかけになったのがこのカレー皿だったというエピソードがあります。一枚一枚違う柄のカレー皿は個展などでは大人気で争奪戦になるとか。

引用画像:中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

引用画像:kumachild instagram

ふもと窯や岩井窯といえば「民藝」を代表する窯元です。こちらで修業をされた齋藤さんの作陶の心も、使うことに美を見出す「用の美」そのものです。

引用画像:中目黒SML

使えるものしか興味がないと言い切る齋藤さん。自ら料理や盛り付けも行うため、うつわを手に持って出来上がった料理を盛り付ける一連の流れが齋藤さんのスリップウェアにはとても重要な要素になっています。料理を邪魔しない、料理が映えるうつわつくりをポリシーとし、うつわと料理のバランスを考慮したスリップの絵の余白が絶妙です。そして、大らかでダイナミックなうつわは齋藤さんの個性が見事に映し出されています。

1969年神奈川県藤沢市生まれ。

引用画像:遠近 instagram

名称:齋藤十郎
取扱店:中目黒SML https://sm-l.jp/ ほか

8.十場 天伸(じゅうば てんしん)/つくも窯

引用画像:遠近 instagram

兵庫県生まれの十場天伸さんは神戸の六甲山系をのぞむ美しい長めの里山に窯を開いています。中学生のころから陶芸に興味を持ち島根県の全寮制の高校に通い、民藝の聖地とも言える島根県の窯元をたくさん見て回りました。そしてアメリカにもわたり美術館や博物館を足しげく通い、陶芸について多くのことを吸収してきました。

そのような経験から、十場天伸さんは日本だけでなく、アメリカでも大々的な個展を開催して海外からも注目されています。

引用画像:CHARIOTS ON FIRE instagram

十場さんのスリップウェアは一見すると、英国の古陶のスリップウェアの魅力をふんだんに感じますが、実際手に取ってみるとその軽いエレガントさに驚かされます。ずっしり重厚感があるスリップウェアの概念を、見事に裏切る美しさです。

中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

スリップウェアの伝統的な文様をとても緻密に丁寧に描いているうつわは、モダンでスタイリッシュです。モノトーンのスリップウェアは洋食器のような雰囲気も醸し出しています。

中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

スリップウェアは、オーブンウェアとして発達したものであるため、オーブンや電子レンジで使用することは可能ですが、通常直火での使用はできません。けれども、十場さんのうつわは直火で使うことが出来、鍋料理や調理器具として料理を最高に楽しませてくれます。

中目黒SML GOLDEN SLIPWEAR 2019

古い英国スリップウェアの文様をそのままに、現代の感性に実にマッチした、十場さんの新しい時代のスリップウェアは、日本のみならず世界を魅了していくことでしょう。

1981年兵庫県生まれ。

引用画像:遠近 instagram

名称:十場天伸/つくも窯
住所:〒651-1621 兵庫県神戸市北区淡河町神影941-20
HP:http://www.tsukumogama.com/
Blog:https://tukumogama.exblog.jp/
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9.中川 紀夫(なかがわ のりお)/紀窯

引用画像:中川紀夫氏instagram

長崎県波佐見町の中尾山で作陶をしている中川紀夫さんは、波佐見の孔明窯の長男として生まれました。栃木県益子の大誠窯で8年間学んだ後に2009年に独立しました。

天然の素材のこだわる中川さんのスリップウェアはこれぞ英国スリップウェア!。古陶スリップウェアの魅力を忠実に表わしています。一連文様、三連文様、格子文様、格子文様といった英国スリップウェアの王道の様なうつわは、スリップウェアを求めてきた人の期待裏切りません。

引用画像:中川紀夫氏instagram

引用画像:中川紀夫氏instagram

伝統工芸は芸能を受け継いでいくにあたり、「写す」といった工程は非常に大切です。中川さんの「写す」クオリティは素晴らしく、あの英国でスリップウェアといえば飾り皿、当時の飾り皿を見事に写していました。

中目黒SML Golden Slipwear 2019

中川さんの試みは、アメリカのスリップウェアに見られる「レッドウェア」。スリップウェアを用いている料理家の方が、お料理、特に野菜料理を盛り付けるときに一番きれいに映えて使いやすいのはレッドウェアだと言われたそうです。

引用画像:中川紀夫氏 instagram

スリップウェアの特徴である縁のギザギザしたところもとても美しく精密に仕上げています。クラシカルなスリップウェアを堪能できますね。

1980年長崎県生まれ。

名称:中川紀夫/紀窯(きがま)
住所:〒859-3712 長崎県東彼杵郡波佐見町中尾郷665-1
電話:0956-85-3338
営業時間:8:00~17:00 定休日 日曜日 
         ※定休日の場合でも営業していること有(要電話お問い合わせ)
HP:http://www.kigama.jp/
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10.太田 剛速(おおた たけとし)/まるた窯

福岡県と大分県の県境の大自然豊かな東峰村は民陶として絶大な人気を誇る小石原焼の陶の里です。太田剛速さんは、小石原で伝統的な小石原焼の作陶を励む一方で、独自の技に果敢に挑戦しアーティストとしての作陶にも情熱を注いでいます。

引用画像:太田剛速氏 instagram

イギリスとスペインの窯元で学んだ太田さん。「太田剛速の挑戦」として小石原ならではの独自のスリップウェア「Tarnip(ターニップ)」シリーズを誕生させました。イギリスで生まれたスリップウェアの技術を小石原焼と融合させた新しい器です。

 

 

Tarnip(ターニップ)とは、菁(かぶ)のこと。世界中で食されている菁(かぶ)のように多くの食卓で愛されるうつわになることを願って名づけられました。

コロンとしたフォルムはまさに菁!そしてイギリスのバーナード・リーチ氏の学校で陶芸を学んだ太田さん。英国の陶器のデザインも取り入れて、こんなにかわいいうつわが誕生しました。小石原の土と釉薬を原料として、イギリスのスリップウェアの技法を取り入れたTarnip(ターニップ)シリーズは、英国スリップウェアと小石原焼のマリアージュですね。

小石原特有の美しい飴釉シリーズはお料理が映える癒しの器として、多くのファンの心を掴んでいます。また太田さんが情熱を注いで手間をかけて創り上げた、小石原焼の緑と違う新しい「緑」色のシリーズはその美しさが際立っています。

1969年 福岡県生まれ。

名称:太田剛速/まるた窯
住所:〒838-1601 福岡県朝倉郡東峰村大字小石原666-3
電話:0946-74-2220
営業時間:9:00~17:30 無休
まるた窯Facebook Instagram
Turnip(ターニップ)Facebook

 

11.芦澤 和洋(あしざわ かずひろ)/陶芦澤

引用画像:芦澤和洋氏 instagram

富士山の山麓の自然に囲まれた富士川のほとりで作陶をしている芦澤和洋さんは、練り込み作品や壁面などの第一人者である曾田雄亮氏に師事。2006年に独立した後、2014年からスリップウェアの制作を始めました。

芦澤さんは土にもとてもこだわりがあり、日本全国の土を試した結果、作品との相性が良かった瀬戸内の土を使用しています。

引用画像:芦澤和洋氏 instagram

芦澤さんのスリップウェアは白い土とその軽さに驚きます。重厚感があり、大らかな器のイメージであるスリップウェアですが、芦澤さんの作品はとてもモダンで洗練されていて、どことなく北欧のイメージがします。規則正しく整然とした精密な文様は、実はフリーハンドで描かれたもの。流動的なスリップによる装飾で、それはとても難しい技ではないでしょうか。スリップの柔らかさや流れ具合を頭の中に入れて、その動きを計算したうえでスリップ装飾する芦澤さんの制作工程は、頭の中のコンピューターによるものではないでしょうか。

引用画像:芦澤和洋氏 instagram

芦澤さんのスリップウェアには定番の「黒×飴」の色合いのものと、もうひとつ代表的なものは「青×白」のシリーズがあります。

スリップウェアにはとても珍しい色合いは、芦澤さん独自のものです。シンプルモダンな爽やかなスリップウェアはテーブルコーディネートやお料理の盛り付けにとても映えますね。

1979年静岡県富士市生まれ。

引用画像:芦澤和洋氏 instagram

名称:芦澤和洋/陶芦澤
Instagram

 

12.柳瀬 俊一郎(やなせ しゅんいちろう)/陶房沙器

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram

長崎県の佐世保市でスリップウェアを制作している柳瀬俊一郎さん。「伝統的なスリップウェアの技法で現代の食卓に合う器を作りたい」というポリシーの元、生み出されるうつわは、ひとことで「かわいい!」。一目で目が釘付けになるくらい、惹かれるうつわを作っている今注目の作家さんです。

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram

若い感性とモダンなセンスは、スリップウェアという少し通好みのマニアックな世界がぐっと身近な存在になります。これからの新しいスリップウェアのスタイルを感じる柳瀬さんの作風は、老若男女幅広い方々から支持を得そうです。

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram

柳瀬さんの技を見せつけてくれる作品をご紹介します。ろくろで形成したマグカップに、なんとフェザーコームの文様を施しています!これには驚いてしまいました。

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram

お花や雲のような文様もとても可愛らしい雰囲気で、シンプルで大らかなスリップウェアの文様に新しい風が吹き込んでいるようです。また、柳瀬さんの釉薬の色彩はとても柔らかく、華やかな明るい印象です。柳瀬さんの温かいお人柄が映し出されているように思います。

1980年6月15日生まれ。

引用画像:柳瀬俊一郎氏 instagram(博多阪急個展より)

名称:柳瀬俊一郎/陶房沙器
Instagram 


現代のスリップェアの礎のような存在の作家さんから、意欲的に挑戦している若手作家さんまでご紹介しました。英国スリップウェアの技法に忠実に従って再現された日本のスリップウェア。一見同じような感じの作風に見えますが、様式美ともいえる、決まったスタイルの中で描くうつわの世界は、制約を受けているからこそ、作家さんのうつわに寄せる想いや個性が浮かび上がるように思いました。

遠い過去に英国で幻となってしまううつわは、現代の日本の作家さんたちの手によって、日本の風土や日本人の感性と共に実に心に響くうつわとして花を開かせています。

ライターの私も、いつの日か一家に一枚はスリップウェアのオーブン皿が当たり前のように並んでいる様子を想い描いています。民藝の世界の至宝である「スリップウェア」をこれからも受け継いでいきたいですね。

一度手にしたら五感にとても響いてくるスリップウェア。食卓に取り入れてみたらきっとそこには温かな空気が漂い、心が癒されることでしょう。ぜひお気に入りの日本のスリップウェアに出会ってくださいね。

※アイキャッチ画像:引用 中目黒SML instagram

 

(テーブルライフ編集部:リーフ)