有田焼「真右ェ門窯」を徹底解剖 ~ まさに芸術品のうつわの魅力

有田焼の名窯・真右ェ門窯 ~ 宝石のような美しいうつわ

引用画像:公式facebook 工房に併設されているギャラリーでも作品を販売。

今回紹介するのは、有田焼の窯元・真右ェ門窯(しんえもんがま)。有田焼というと、染付や伊万里のような華やかな手書きのイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。

しかし、真右ェ門窯の特徴は、唯一無二の色彩と模様。これは、独自に生み出した釉薬による変化、窯変(ようへん)によるものです。窯の温度や材料の配合で微妙に異なる色やデザインを楽しめるうつわはどれも1点もの。

釉薬のみで夜空などを表現する独自の作風のうつわは、まさに芸術品。そのため特別なギフトなどに使われることが多いのも特徴です。しかも、美しいだけでなく、人間工学的に持ちやすさを追究し、湯呑や飯碗など持ち上げて使ううつわは軽量化を実現。見た目も実用性を兼ねたうつわは、ふだん使いにも向いています。

また、現在二代目の馬場九洲夫さんは、様々な工芸展で受賞歴のある現代の名工。なかでも、日本最大の美術展である、日本美術展覧会(日展)工芸美術部門で特撰を受賞しています。そのような美術展や画廊などでしかお目にかかれないような作家のうつわが、通販で購入できるのです!

今回は、釉薬の独特な変化で奇跡のようなうつわを生み出す、真右ェ門窯の魅力を作品と共にお伝えします。

■窯変(ようへん)とは

真右ェ門窯の特徴である、窯変(ようへん)とは、陶磁器を焼く際、窯の内部で作品に生じた色の変化のこと。 窯の炎による現象であることから「火変わり」ともいいます。 炎の性質や釉(うわぐすり)に含まれる物質などにより、予期しない色や模様が生じることをいいます。また、その偶然の変化を出すために、作為的に行うこともあります。

◆真右ェ門窯について
(公式HP:http://www.sinemon.com/index.html

真右ェ門窯は昭和47年創業。初代・馬場真一郎氏が当時としては数少ない焼物の大物を作りたいとの思いから開窯しました。現在は馬場九洲夫氏が「二代真右ェ門」を襲名。

当初は、染付を製作していましたが、次第に窯変物(ようへんもの)へと変化していきます。近年では「造りの冴え、釉の妙」をキャッチフレーズにルビー色の「辰砂」や「結晶釉(けっしょうゆう)」などの窯変物を中心に、釉薬を巧みに操る「釉彩(ゆうさい)」の技法を得意とする窯元として知られるようになりました。また、2011年より中国を中心に海外に進出しています。

ちなみに、二代目の馬場九洲夫さんは、もともとは化学会社の会社員。結婚を機に真右ェ門窯に入り、有田焼でできることを1年ほど模索。その結果、他の人が手を付けていない、自分の得意な化学の分野でやっていこうと決断。現在の様々な釉薬を扱う作品作りにつながっています。

【窯元データ】
 住所:佐賀県西松浦郡有田町南原甲200
 電話:0955-42-6278
 営業時間:9:00~17:00
 定休日:日曜日
 駐車場:あり
 アクセス:JR佐世保線「有田」駅より車で2分

昭和48年 国立佐世保工業高等専門学校卒業
昭和51年 佐賀県窯業試験場入職陶技の基礎を学ぶかたわら釉薬の研究を始める
昭和55年 真右エ門窯に入り作陶を始め、釉薬の研究を続け現在に至る
平成5年 第90回九州山口陶磁展「藍染水滴大鉢」二席受賞
平成9年 第36回日本現代工芸美術展「春旭」入選(以後、連続入選)
第20回日展「旭映」入選(以後、14回入選)
平成12年 第50回佐賀県展「遙かな漣」大賞50周年特別賞受賞
平成16年 ドイツ有田陶芸展へ「遙かを望む」「海辺の詩」を出品
平成17年 第44回日本現代工芸美術展「黎明・05」現代工芸賞受賞以後会員出品
平成20年 第47回日本現代工芸美術展「旭・08(Ⅰ)」現代工芸本会員賞受賞
平成22年 第49回日本現代工芸美術展審査員を委嘱される

主な作品シリーズ

1.青き明星(あおきみょうじょう)



「青き明星」は宇宙と禅という雄大なテーマを持ったシリーズ。表面のデザインは、漆黒の宇宙に輝く月光を表現しています。白い窯変が、流れ星や彗星を連想させます。

また、カップとソーサーの縁には、プラチナ色の本白金彩が施されており、本体とのコントラストが際立ちます。濃紺とゴールドの組み合わせは特別なギフトやおもてなしにピッタリです。

【商品名】青き明星コーヒーカップ
【価格】33,000円(税込)

2.銀河(ぎんが)



銀河は、国宝に指定される油滴天目を発展させた伝統と革新の技法。星が降るような宵の空を釉薬のみで表現しています。ちなみに、写真の夫婦湯呑は、大湯呑には2本線、 小湯呑には1本線が描かれており、2つの個性を楽しめるようになっています。高台まで美しく釉が掛かっており、とても手が込んでいます。

また、人間工学に基づき持ちやすさを追究。160グラムの軽量で抜群の保温性。実用性も優れたうつわです。

【商品名】睦揃(夫婦茶碗セット)銀河 
【価格】23,000円

3.耀変辰砂(ようへんしんしゃ)



窯を代表する独特の赤が目をひく「辰砂(しんしゃ)」。 辰砂とは、釉中(ゆうちゅう)に含まれる銅分が、窯の強い炎で、天然鉱物の硫化水銀と還元し発する赤色のこと。明朝時代には「宝石のような美しさ」と言われ、高く評価されていました。

二代目の馬場九洲夫さんは、佐賀県窯業試験場で辰砂の花瓶と出会い、この色を出してみたいと思ったそうです。試行錯誤の上生まれた、真右ェ門窯の辰砂の特徴は濃厚なルビー色。厳選された磁器のみを素材に、1300℃の窯の中で、長い時間をかけて焼き上げられることで生まれます。他にはない独特の「赤」のうつわは還暦祝いなどに人気だそう。赤には、食欲増進や魔除けなど様々な意味があります。ハレの日や特別な贈り物にふさわしいですね。

【商品名】耀変辰砂 マグカップ
【価格】8,800円

4.藍染水滴(あいぞめすいてき)



数十年の釉薬研究で生み出した藍染水滴。藍色と乳白色の結晶が光にあたることで、色彩の変化を楽しめます。特に飯碗はわずか140グラムと軽量にもかかわらず、丈夫にできています。

↑ 表面のアップ。細かい結晶に光が当たると宝石のよう。

実用的で、幅広い世代に好まれるデザインのうつわは、長く愛用できます。自分へのご褒美や結婚祝いから両親へのギフトまで、様々な場面に使えそうですね。

【商品名】睦揃(夫婦茶碗セット)藍染水滴 
【価格】20,000円(税込)

5.桜花紋(おうかもん)



写真は、桜色の結晶が花開き、夜桜を思わせる桜花紋のコーヒーカップ。釉薬の流れ、傷、割れ、変色など、窯出しの際に大半の作品がボツになってしまうことが多々ある、難しい技法の一つだそう。

また、ソーサーはお皿としても使えるようになっています。桜色の結晶の配置や大きさは1つとして同じものはありません。手のひらでお花見が楽しめますね。

【商品名】桜花紋丸コーヒーカップ
【価格】11,000円(税込)

6.油滴天目(ゆてきてんもく)



写真は油滴天目の湯呑。油滴天目とは、漆黒の釉中に油のしずくが浮いているかのように銀白色や金茶色の結晶が現れたものをいいます。

上部の縁は、 金覆輪と呼ばれる技法を用いて、本金で装飾しています。宇宙にきらめく星を斑紋にして描いたうつわの縁を、金でぐるりと囲んだデザインはとても神秘的。

【商品名】高級湯呑み 耀変油滴天目本金彩 
【価格】11,000円(税込)

7.白天目(しろてんもく)



1573年に織田信長が茶会で使用した、白天目茶碗を現在に再現。油滴天目同様、縁には本金を施してあります。光沢のある、雪の結晶をちりばめたような表面にゴールドが美しいうつわ。シンプルなのに高級感のある雰囲気を醸し出しています。

また、茶碗と湯呑みは軽くできており、硬質で丈夫。実用性も兼ね備えた秀逸なうつわは、贈り物にもぴったりです。

【商品名】睦揃 白天目本金彩 
【価格】44,000円

8.シルクロード



最後に紹介するのは、シルクロードシリーズのペアのマグカップ。有田焼伝統の白磁に辰砂と呉須で砂漠の地平線を表現しています。

特に青の方は、水色の釉薬に青みがかった色彩の釉薬が2重で施されています。海のシルクロードが見事に表現された逸品です。 独特の釉薬使いで、砂漠の雄大な陽に照らされるなだらかな砂丘が目に浮かぶようですね。

【商品名】ペアマグカップ シルクロード
【価格】22,000円(税込)

真右エ門窯のうつわを購入できるお店

〇JTOPIA (https://www.jtopia.co.jp/

有田焼の高級商品を幅広くそろえる通販サイト。「青き明星」や日展特選賞受賞記念の「銀河」など真右ェ門窯の限定品を取り扱っています。また、特A品質(最高品質)が手に入る唯一のショップでもあります。特A品質とは、一流の作家・窯元が作り上げた作品の中から、釉薬の美しさや発色が極めて美しい作品を店主と窯元らが目利きした極上品のこと。通販などに並ぶ一般商品と異なり、美術画廊や個展に出品するレベルの品物です。家にいながら、高品質のうつわが手に入ります。

〇丸兄商社 (https://www.arita-marukei.com/

大正3年創業の有田焼・波佐見焼の専門商社。真右ェ門窯の商品は盃、お猪口と徳利のセットなど酒器を中心に販売しています。

〇久保田陶器店 おちゃわんどっとこむ (https://o-chawan.com/

有田焼・伊万里焼の専門商社が運営するオンラインショップ。真右エ門窯の商品はぐい呑みばかり20種類以上扱っています。

いかがでしたか。窯変という、絵付けではない方法で、四季や自然の美しさを表現する真右ェ門窯。気候や窯の温度など様々な条件で、違う表情を見せる一期一会のうつわを手に入れて、上質な時間を過ごしてみませんか。

〔取材・編集:テーブルライフ編集部〕