常滑でうつわ散歩 ~ 常滑焼まつりとやきもの散歩道・INAXライブミュージアムをめぐる旅

常滑焼でうつわを探す ~ 常滑焼まつりとおすすめ散策コースをご紹介

先日、常滑焼まつりにあわせて愛知県の常滑を旅してきました。常滑焼は日本六古窯の1つで、朱泥といわれる赤茶色の急須が有名です。

今回は、常滑のおすすめのうつわ屋さんや見どころを私がたどった順に紹介します。いつかの旅行の参考にお読みくださいね!

常滑焼とは

六古窯最大の生産地・常滑。常滑はやきものの材料である土・木(燃料)が豊富で海に近く、重量のある焼き物を運ぶ運送手段に恵まれていたことでやきものの町として発展しました。

常滑焼は釉薬を用いない焼締(やきしめ)という技法が特徴。江戸後期より中国の急須を模しつくられた朱泥の茶器はその代表的な商品です。

また、ろくろを使わず作り手が回りながら成形する「よりこ造り」も特徴の1つで、大型の甕(かめ)や壺等も多く生産されています。

常滑焼は六古窯の中でも歴史が古く、時代に応じて作る物も変化しています。例えば、常滑焼の主力商品・急須が作られるようになったのは江戸時代。中国江蘇省の宜興で焼かれている紫砂を手本にしています。

明治時代には鉄道や下水の普及で木型を用いた土管、西洋建築の影響でタイルが作られるようになりました。ちなみに東京駅の復元工事(2007年4月〜2012年10月)で使用されているタイルは常滑焼。常滑市のメーカー株式会社アカイタイルのものです。

招き猫の生産が日本一

昭和35年に小判を持たせた2頭身の招き猫が登場したのが人気のきっかけと言われています。市内には、巨大な招き猫の頭のオブジェ「とこにゃん」や、39体もの招き猫が並ぶ「とこなめ招き猫通り」があり人気の観光スポットになっています。

 

常滑焼まつりについて

〇公式HP :https://tokoname-event.jp/page/yakimatsuri.html

引用画像:公式HP

常滑焼の魅力を全国に発信するため、常滑市内の各所で行われる常滑焼のおまつりです。

会場は、ボートレースとこなめ、とこなめセラモール、やきもの散歩道、イオンモール常滑のほか、常滑市内の各販売店という広範囲。当日は無料のシャトルバスも運行します。

B級品や在庫処分品などもあり、通常よりもお得な価格で常滑焼が販売されます。従来は同時に花火大会も開催されていましたが、2022年は中止になりました。やきもの以外にもフードブースもあるので食べ歩きも楽しめます。

■常滑焼まつりを楽しむ

常滑駅に到着すると、ポスターの前に人だかりが。先着500名にプレゼントがもらえるというQR コードが掲載されていました。私も早速読み取り完了!

徒歩5分ほどで、おまつりのメイン会場の1つである「ボートレースとこなめ」に到着。入口前の広場を中心に約80以上の作り手・窯元が出店しています。たくさんのブースを見るだけで一気にテンションが上がります!

モダンなうつわは佳窯(マルヨ久田製陶所)。麻の葉模様のコースターはお土産にもいいですね。

 

行く前から気になっていた憲司陶苑。ふぞろいのドットがユニーク。カラー展開が豊富なので迷ってしまいますね。

 

見どころは、やっぱり急須! 急須だけ扱う窯元も多く、ふたにレリーフが施されていたり、光沢のある釉薬を使ったものなど、他ではあまり見かけない商品に出会えました。

 

もう1つのおすすめは、若手作家のコーナー。急須や植木鉢など、従来の常滑焼のイメージにはない個性ある絵付けのうつわなどが見応えあり。

ただ、人気の作家さんは、レジ待ち長蛇の行列が。どうしても欲しい物がある場合は、初日早めに行きましょう。

↑ atelier4(厨淑絵)さん。リムが広いうつわはどれも使いやすそう。画像もあるので、盛り付けのイメージがしやすいです。

こちらも若手作家コーナーのブース。さびたような色合いがアンティークのよう。

私が、陶器まつりで購入したのはブラックの急須。B級品を1,200円均一で販売しているお店があり、これはお買い得! と散々悩んで選んだのがこちら。

ゴールドのラインが黒地に映えるモダンなデザインが気に入りました。ハロウィンのテーブルコーディネートにも使えそう。

また、駅でダウンロードした画面を表示して、プレゼントもいただきました。リアルなデザインのお魚の箸置きが2つ。お魚料理の時に使えますね。

 

やきもの散歩道へ移動

常滑焼まつりを楽しんだ後は、やきもの散歩道へ向かうため、再び駅へ戻ります。常滑焼といえば、招き猫。そのため、常滑駅前にはユニークなデザインの招き猫のオブジェがたくさん展示されています。

 

さらに、駅向かいの通りは「とこなめ招き猫通り」。平和、健康など様々なテーマの招き猫が壁面にずらり。1つ1つ眺めながら焼き物散歩みちへ向かいます。

アートな招き猫が並んでいて飽きません。皆さんお気に入りを撮影しながら散策。

 

■やきもの散歩道でうつわめぐり

お楽しみの「やきもの散歩道」へ突入。私が訪れたうつわのお店や見どころを紹介していきます!

常滑市陶磁器会館

駅から歩くこと10分程度で「常滑市陶磁器会館」へ。ここをお散歩の出発点とすると分かりやすいです。館内には売店と伝統工芸士の展示コーナーがあり、基本的なうつわを見ることができます。また、美術館など観光スポットのチラシなどもあるので、情報収集に立ち寄るのもいいかもしれません。。

住所:常滑市栄町3丁目8
電話: 0569-35-2033
営業時間:9:00~17:00
URL:https://www.tokoname-kankou.net/spot/detail/5/

 

TOKONAME STORE

ショップの外観もおしゃれ! 撮影する人たちで常ににぎわっていました。

まず向かったのが、散歩道から少し離れた場所にあるTOKONAME STOREへ。常滑焼の窯元山源陶苑が運営しています。

倉庫を改装したショップ内は3つの小屋があるユニークなつくり。商品を販売するSTORE、陶芸体験ができるWORKSHOP小屋、コーヒーがいただけるSTANDに分かれています。

商品はシンプルで、淡いトーンの使いやすいものばかり。どんなメニューにも使えそう。

新生活で初めてうつわをそろえる方、茶器のセットをプレゼントしたい方などにもおすすめのアイテムがそろっています。

珍しいのが「かめパン」。その名の通り甕(かめ)に入ったパンを販売しています。お土産にもいいですね。

住所:愛知県常滑市原松町6-70-2
営業時間:11:00~18:00
電話:0569-36-0655
URL:https://tokonamestore.com/

再び、陶磁器会館近くまで戻って「やきもの散歩道」へ!

スターとするとすぐに現れるのが「とこにゃん」の後ろ姿。道を渡って正面から撮影しましょう。

 

ギャラリー敏

店舗の壁には、急須のふたでハート形。かわいいですね!

とこにゃんからすぐの小さな木造の建物。常滑焼らしい渋いカラーの茶器やカップなどが並んでいます。私が気になったのはボトル。お水など飲物の味がまろやかになるそう。ちょっと試した見たくなりますね。店内の床には、焼き物のかけらが敷き詰められていて、足に優しい感じ。

ろくろ体験もやっているそうなので、気になる方は事前にお問い合わせしてみましょう。

住所:常滑市栄町2丁目33
電話:090-6649-0572
営業時間:10:00~17:00
URL:https://www.g-toshi.com/

 

古民家カフェで昼食~うつわはもちろん常滑焼

まわるカフェ・まわる雑貨店

古民家スペース「imawo」の1階にあるカフェでランチ。日替わりランチの藍(あい)としめじのパスタをいただきました。うつわももちろん常滑焼。「食と器の出逢い事業補助金」という制度を使い、常滑焼の3つの窯元のうつわを使っているそうです。

また、カフェの家具などの備品は古い物をリユース、ゴミゼロ、フードロスがないよう運営しているそう。

2階は雑貨店ですが、食事もできます。温かみのあるうつわのほか、アンティークのボトルなども販売されています。

住所:常滑市栄町2丁目87
営業時間:9:30〜16:00
URL:https://imawo.space/
https://www.instagram.com/imaw.o/

 

ギャラリーほたる子

 登り窯の近く、店外のかわいらしいお地蔵さんが目印です。店内では作家さんの個展も開催しており、品ぞろえもどこかユニーク。動物のオブジェや楽しいデザインのものが多く旅の記念にも良さそう。

ちなみに、お地蔵さん作りもできるそう。興味がある方はトライしてみては。

隣のカフェの看板猫。ベンチに座っていたので記念撮影。

住所:常滑市栄町6-140
電話:0569-36-0680
営業時間:10:00~17:00
定休日:木曜日
URL:http://www.hotaruko.net/
https://www.facebook.com/hotarukodayo/

 

SPACEとこなべ

登窯(陶栄窯)近くにある3階建ての古い窯場を再生したギャラリー兼ショップ。静かで落ち着いた雰囲気の店内では、じっくりとうつわ選びができます。30以上の作家さんの品物を扱っているそう。急須をはじめとした茶器の品ぞろえが充実。長く使える質の良い逸品が見つかりますよ。

住所:愛知県常滑市栄町6-204
電話:0569-36-3222
営業時間:10:00~17:00
定休日:金曜日

 

たかを窯

おまつり期間中なので、二級品などをセール価格で販売していました。店外のワゴンにはシンプルなお猪口がずらり。お酒好きならまとめ買いするのもありですね。オブジェなど小さめの物も多く、旅の記念のお土産探しにもいいですよ。

住所:常滑市栄町6丁目134
電話:080-6685-9183
営業時間:不定休のため要問い合わせ(SNSを確認)
URL:https://www.instagram.com/takawogama/
https://www.facebook.com/profile.php?id=100066522412186

 

ともの世界

石水窯さんに隣接しているのは上田智美さんのショップ「ともの世界」。小さな店内には、スタイリッシュでモダンなうつわが並んでいてギャラリーのよう。

私が気になったのは、ざらっとした質感の深いグリーンのうつわ。丸でもなく、三角でもない不定型な形も面白いと思いました。

過去には、銀座の「ギャラリー門」で販売していたこともあるそうで。都内で見かけたら欲しくなってしまうかもしれません。

住所:常滑市栄町6丁目
電話:0569-47-5274
営業時間:10:00~17:00

 

やきもの散歩道のみどころ

土管坂

常に混雑している土管坂。人が通り過ぎたら、シャッターチャンス!

やきもの散歩道を代表するフォトスポットの1つである土管坂。廻船問屋瀧田家の前の坂を上るとすぐの所にあります。

明治期の土管と昭和初期の焼酎瓶が壁面を埋め尽くしている空間は、他にはない景色ですね。

坂道には「ケサワ」という土管の焼成時に使用した捨て輪の廃材を敷き詰め、滑らないように工夫されています。坂を上った先には、土管坂休憩所があります。飲物を買って休むもよし、招き猫などの絵付け体験もできますよ。

休憩所では、畳に座って絵付け体験ができますよ。

 

煙突のある風景

やきもの散歩道では、何カ所か煙突を見ることができます。かつての登り窯の跡として、風景になじんでいます。やきものの町ならではですね。

写真は陶榮窯(とうえいがま)の登り窯。

1887年(明治20年)頃に築かれ、1974年(昭和49年)まで使用され、現存する登窯としては最大級だそう。1982年(昭和57年)に国の重要有形民俗文化財に指定、2007年(平成19年)には近代化産業遺産に認定されています。

 

廻船問屋 瀧田家

引用画像:公式HP

江戸時代から明治時代にかけて廻船業を営んでいた瀧田家。1850年頃に建築された建物内には、和船の模型や海運の歴史が分かるパネルが展示されています。

当日は国際芸術祭「あいち2022」の会場として使用されており、エキゾチックなテキスタイルを見ることができました。古い建物とアートのコントラストが素敵でした。

住所:愛知県常滑市栄町4-75
電話:0569-36-2031
営業時間:9:30~16:30
定休日:毎週水曜 年末年始
入館料:200円(20名以上の団体は150円)中学生以下は無料
URL:https://www.facebook.com/TAKITAKEtokoname/

 

■旅の終わりは「INAXライブミュージアム」へ

やきもの散歩道からINAXライブミュージアムへ行くには「陶彫のある商店街」を通っていきます。

「とこなめ中央商店街」の路地に、市内の作家等から無償提供された陶彫約150体がランダムに設置されています。海外の作家さんの現代アートのような作品もあり、撮影しながら歩くのは楽しいですよ。

 

INAXライブミュージアムについて

公式HP:https://livingculture.lixil.com/ilm/

INAXライブミュージアムは、LIXILが運営する文化施設で、「窯のある広場・資料館」「世界のタイル博物館」「建築陶器のはじまり館」「土どろんこ館」「陶楽工房」「やきもの工房」の6館で構成されています。

陶磁器(特にタイル)の歴史や製作過程を学べ、ものづくり体験もできる国内でも珍しい陶磁器の複合施設です。

 

みどころは「世界のタイル博物館」

ここでの楽しみは、やっぱりタイル博物館。私はタイルも好きなので、世界各国のタイルを一度に見ることができたのは良かったです!

①フォトスポットで美しいタイルを撮影

エントランスからは、イスラム、エジプト、イギリス、オランダなどのタイルを室内に再現。ガイドブックでよく見るモザイクタイルの天井はイスラムのもの。部屋の照明が変わるので、ベストのタイミングで撮影しましょう。旅行の記念になりますね。

②各国のタイルの歴史と特徴を学ぶ

2階は国別にタイルの歴史と特徴や作り方がパネルで解説されています。タイルの現物も豊富に展示されているので、楽しく学べます。

写真は、かつて少しだけ集めていたマジョリカタイル。凹凸のあるデザインとカラフルな色合いが素敵ですね!

 

③世にも珍しい「古便器展示室」を見学

最後のコーナーは「古便器展示室」。有田焼の染付の便器のほか、瀬戸焼、信楽焼など主要なやきもの産地の古便器が展示されているのはINAXならでは。トイレというより芸術品です。ちなみに、ミュージアムショップで「便器もなか」を買いました!

「土どろんこ館」「陶楽工房」では、各種ワークショップを開催。体験の種類が豊富なので、事前に選んで申し込むのがおすすめです。ミニ便器に絵付けや、木のおうちにモザイクタイルを貼り付けるなど趣向を凝らした体験メニューはどれもひかれました。

レストランもあるので、ファミリーやグループで行くのもいいですよ。

お土産にトイレの形の最中を購入。さすがINAXですね!

 

常滑を訪れて

常滑焼というと、朱泥の急須と招き猫という渋めのイメージでしたが、フレンチレストランで使われていそうなシックなうつわやふたのデザインが凝った急須など、新たなうつわとの出会いがありました。

「やきもの散歩道」を中心に巡ることで、さまざまなタイプの常滑焼を1日で見ることができたのは良かったです。

また、煙突や土管坂などやきものの町ならではの風景も魅力。懐かしい雰囲気の路地を巡りながら、スタンプラリー感覚でお店を巡るのは楽しいひとときでした。

INAXライブミュージアムでは、タイルを中心に常滑焼の歴史も学べ、貴重な展示品も見ることができ、うつわに特化した大人の修学旅行を堪能しました。

常滑は、名古屋から電車で30分、中部国際空港(セントレア)からも1駅と好立地。今回足を運べなかった美術館やお店を訪ねに再度行きたいと思いました。

皆さんも次回の旅行に常滑はいかがでしょう。名古屋や瀬戸など近隣の観光地とあわせて行くのもいいですよ。

〔取材・編集:テーブルライフ編集部〕