【小石原焼・高取焼特集】ゴールデンウィークに東峰村『民陶祭』で行きたい窯元7選、その1「マルダイ窯」

小石原焼 マルダイ窯
太田万弥(おおたかずや)

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2017年、今年の小石原焼・高取焼の「春の民陶祭」はGW(ゴールデンウィーク)の5月3日から5日まで東峰村で開かれます。約50軒の窯元が集まる中から、ぜひチェックしたい7軒の窯元をテーブライフがピックアップ。これから数日おきに公開いたします。

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伝統を現代の食卓に生かす「用の美」を追求する歴史ある窯元

室町時代に始まったといわれる小石原焼。その発祥の地であり中心地であり続けている、皿山地区のなかほどに「マルダイ窯」はあります。

2017年の3月、なごり雪が舞う中をこの窯元にお邪魔して、窯主の太田万弥さんに話をお聞きしました。
皿山の石畳道から少しだけ奥まったところに見える、茅葺の古民家。そこがマルダイ窯のギャラリーショップ。ダムに沈む運命だった庄屋のお屋敷を、先代が移築したものだそうです。
左手に新築のショップギャラリーがあり、右手の古民家ギャラリーと中で繋がっています。
ギャラリーに入ると、まず目につくのは正面の季節のコーディネート。周りにはぐるっと作品が並べられています。

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ショップの奥が隣の茅葺古民家に繋がっています。土間は先代までの作品のギャラリー。座敷は勝手に上がれませんが、そこにも昔ながらの大皿やつぼが飾られています。そして、見上げると照らし出されているのは釘を使わず組み上げられた大屋根の梁。この建物は築350年。庄屋の屋敷の一部だったという風格が感じられます。
この建物の右手を少し登った敷地内には、窯と陶房が構えられています。

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モダンで使い勝手の良いうつわは、伝統と日々の暮らしのこだわりから生まれる

この地で江戸時代の小石原焼創生の頃から、窯元として300年の歴史を紡いできたマルダイ窯。太田万弥さんは15代目の当主です。

現在50軒もの窯がある小石原焼ですが、もともと古くから続く小石原焼の窯元は10軒ほど。それ以外は2代目、3代目の新しい窯元です。おなじ小石原焼とはいえ、その作風は様々。その中でマルダイ窯のうつわは、やはり長い歴史のせいかオーソドックスな小石原焼の伝統を引き継いだスジの良さがにじみ出ています。

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とはいえ「変えることを許されない小鹿田焼(おんたやき)とくらべて、小石原焼には自由さがあり、新しい工夫ができるのがお客さんにとっていいと思う」とおっしゃる万弥さん。
新しい形のうつわを試作しては家族の生活の中で使い勝手を確かめて、売り物なるまでに何度も手直しを繰り返す。民陶のこだわりの精神が生きています。
郷土料理の名人と地元女子に慕われる女将との二人三脚で、使い勝手のいい日常のうつわを工夫し続けています。

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見るだけで区別できる!? マルダイ窯の特徴

小石原焼を特徴付けている技法は6種類。「飛び鉋(かんな)」「刷毛目(はけめ)」「櫛目(くしめ)」「指描(ゆびかき)」「掛け流し」「打掛け」。とくに最初の4つは、小石原で白い化粧土が取れたことから生まれました。シンプルなモダンさがあり、人気の柄です。

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「飛び鉋は入れる人によって強さや間隔が全然違います。うちのものはカンナの模様のひとつひとつが細長くて、幅が長いのが特徴。これは当家の伝統として残していきたい」
地元の焼き物関係者が見れば、飛び鉋ひとつでどこの窯元かわかるとか。

また、この地に小石原焼が生まれた理由は、陶土と化粧土が取れたから。小石原の土を使うことが、小石原の定義となっています。陶土はいまでも組合によって、窯元が共同で国有林を切り開いて採取しているそうです。

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「もともと小石原の化粧土は、白といっても少しくすんでいて黄色味かかったクリーム色なんですよ。いま白いお皿が人気で売れるので、真っ白い土を使うところが多くなってしまいました。いまでも小石原の化粧土で焼いているのは何軒かになってしまいましたが、うちではこの色を大事に守ってゆきたいです」
マルダイ窯に見られる伝統的な小石原の化粧土の色は、しっとりと優しい乳白色。手に取ると、ゆっくり気分が落ち着く感じがしますね。

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長い歴史のある窯元に生まれて、こういう「家の特徴」を子供の時から叩き込まれてきたのかとお聞きすると、意外ですが当代は他の窯元から養子でいらっしゃったそうです。しかもその当時先代は病気で、直接教わることはできなかったのです。
「自分が育った窯は飛び鉋などは作っていなかったので、周囲の先輩たちを訪ねて一から教えてもらいました。皆さん自分の技術に自信があるから平気で見せて教えてくれます」
どんなに真似しても、全く同じようにはならないし、やはり作家ごとの個性が出るのだそうです。
「しかし窯元として家の特徴は残していきたいと思うので、家の古いやきものを真似することで身につけてきました」

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化粧土が模様を奏でる。真っ白なお皿から躍動する刷毛目が生まれる瞬間

ーーどの技法がお好きですか?
「刷毛目です。これを施すとき刷毛で描くのではなく、化粧土を寄せて“たまり”を作るんです。ですから触ってみると、ボコボコと立体的になっているのがわかります。
いい刷毛目模様は”いきている刷毛目”といって、動きがあります。この窯にきて13年、刷毛目は満足いくものができるようになったが、飛び鉋はまだまだだと感じます」
また、ロクロの挽き方にもこだわりがある。
「うちはなるべく薄く引きます。これは土の水分などを間違うと作っている間に落ち(=壊れ)安いんです。厚めに挽いて高台を削り出す方法だと壊れにくいですが、出来上がりの重さや手の馴染み方が変わってきます」

30年以上の時を超えて、登り窯の復活

ーー今後はどのような作陶活動をなさる予定でしょう。
「実は去年(2016年)暮れに、登り窯を新しく築き直しました。もう30年使われてなかった5袋の大きい窯を解体して、3袋の小さい登り窯を作ったんです。空焼きが終わりましたから、いよいよこれで窯焼したいです」

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登り窯はいくつかの部屋が繋がった形になっていますが、これを袋と言います。
「登り窯ひと袋には今使っているガス窯より作品が入るので、3袋分つくりためるのが大変です。かつては大勢の職人で作っていましたが今は女将と二人で作っています。イベントなどに商品を出さなくてはいけないなど納期のある仕事が忙しくて、それに合わせてガス窯で焚いてしまうのでなかなか登り窯で炊けません」

登り窯で焚いた焼き物は、釉薬が流れるなどガス窯では出せない味がでます。この登り窯から作品が生まれるのが、とても楽しみですね。

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太田万弥さんと女将さんのお二人が一番嬉しいことは、お客様がリピートしてくれることだそうです。

「”使っていたお茶碗が割れてしまったんですけれど、これが好きなので同じのが欲しい”と言われると、そんなに気に入ってくださったんだと嬉しくなります。そのうつわの魅力を、お客様から教えていただくことが多いです」

小石原焼の良さはロクロ挽きで、一個から注文にも対応してくれること。

「在庫がなくても、長くて二ヶ月、待ってもらえればお作りします」

これはありがたいですね。

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自分の手に馴染むうつわを見つけて、じっくり時間をかけてお付き合いしたい。そう思わせてくれたマルダイ窯でした。

 

(取材・写真:テーブルライフ編集部)

窯元名   マルダイ窯
 窯主    太田 万弥
 住所  福岡県朝倉郡東峰村大字小石原766
 電話番号  0946-74-2031
 ショップ営業時間  9:00~17:00
 定休日  不定休
 ブログ  http://blog.goo.ne.jp/marudaigamanon
 フェイスブック https://www.facebook.com/marudaigama/

太田万弥略歴

平成3年

 福岡県立浮羽高等学校卒業

平成15年

 第19回小石原焼伝統工芸展 大賞

平成16年

 第58回福岡県美術展覧会 入選

 第24回西日本陶芸美術展 入選

平成17年

 第29回全国伝統的工芸品公募展 入選

 第25回西日本陶芸美術展 優秀賞

平成18年

 第30回全国伝統的工芸品公募展 入選

 第26回西日本陶芸美術展 入選

平成19年

 第31回全国伝統的工芸品公募展 入選

平成20年

 第27回西日本陶芸美術展 入選

平成22年

 第28回西日本陶芸美術展 入選

 

『マルダイ窯のうつわで食べられるお店』

「茶房武蔵野文庫」
武蔵野市吉祥寺本町2ー13ー4
0422ー22ー9107
9時30分~22時まで
月曜定休
http://www.musashino-bunko.com/flash/pages/mokuji.html
(うつわの購入もできます)

○買えるお店

東峰ムラガールズ アンテナショップ『With+(ウイズプラス)』

福岡市中央区鳥飼3丁目7番21号
Tel: 092-741-5148
Fax: 092-720-9618
Open 10:00〜17:00
定休日 水・日
URL: https://withplus.jimdo.com/

○個展・展示会の予定

2017年4月12〜17日 銀座「ギャラリーおかりや」
<松崎芙美子と仲間たち〜小石原焼の若いふたりとともに〜>
http://www.g-okariya.co.jp/schedules/index/48

住所:東京都中央区銀座4-3-5 銀座AHビル B2F (メトロ銀座駅から徒歩約2分)

電話:03-3535-5321

○うつわの写真

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(終わり)