【益子焼特集⑤】「吉田丈」ゴールデンウィークに『益子陶器市』で行きたい窯元5選その5

益子焼

吉田 丈(よしだ たけし)P1090936_R

2017年、今年の「益子陶器市」はGW(ゴールデンウィーク)の4月29日から5月7日まで栃木県益子町で開かれます。実に250軒を超える窯元が集まる陶磁器の郷・益子の中から、ぜひチェックしたい5軒の窯元をテーブライフがピックアップ。第5弾の「吉田丈」さんをお送りします。

テーブルライフコラム「春の陶器市 らくらく行き方&日程まとめ[①関東地方編] 2017 spring」にアクセスと公式情報がまとめられています。

黒とゴールド。モダンだけど古めかしい、不思議な魅力

飴釉と黒泥を使った技法で、 サビ感のある黒の中からゴールドの線が浮かび上がります。モダンだけれどもどこか古めかしい、未知の文明の遺跡の中から出てきたような、不思議な雰囲気が吉田丈さんうつわの魅力です。P1090950_R

陶芸体験が人生の転機

吉田丈さんと陶芸の出会いは他の陶芸家と比較して遅い方だと言えます。

「栃木県の宇都宮の大学に通っていた頃、友人が近くの益子というところで陶芸体験をしたという話を聞きました。それで何となく自分も陶芸体験に行ってみたのが最初のきっかけです」

吉田丈さんはその後小売業に就職。その間にも2回ほど陶芸体験に行き、自分のうつわを作ってみたといいます。

そのときに感じたのは「自分にもできそう、という勘違い」と本人は笑いながら言います。

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想いを行動に。陶芸家への道へ

吉田さんは日に日に陶芸家への想いが止まらなくなり、3年勤めた会社を退職。ついに2006年、益子の「窯業技術支援センター」に入り、伝習生から研修生と2年間学ぶことになります。

しかし、順調に学んでいた吉田さんに試練が襲います。在学中にヘルニアを患ってしまい、センター卒業後には重労働である修行や仕事で窯元に入ることができなかったのです。
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ところが幸運だったのは、センターで勉強中に仲間たちと陶器市に出店していた作品がショップの人の目に触れたことでした。

実はこれは本来禁止されていたこと。「お目こぼし頂いたようで、本当にラッキーだった」吉田さんはいたずらっ子のように語ります。

その結果、陶器市で出していた作品がもとで食器店さんから注文が入ってきました。

ヘルニアで就職を諦めていた吉田さんはこのことがきっかけで、センター卒業後そのまま独立し作家になる道を選びました。

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一般的な陶芸家のように修行を、吉田さんはしていません。そんな彼は、どのようにして技術を学んだのでしょう?

「技術は、数をこなせば腕は上がっていきます」

吉田さんはきっぱりと言い切ります。

「できないことがあったときは、センターやメッセの教室でアルバイトをしていたときの知人に聞けばいいんです」

数をこなすには日々のたゆまぬ努力が必要。どの作家さんもしていることとは思いますが、常に焼き物と向かい続ける努力と持ち前の性格で技術を磨いているのです。

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ご夫妻で陶芸家として活躍中

奥様も陶芸家と伺いましたが、どのような毎日なのでしょうか?

友人の集まりに参加されたときに出会ったという奥様も陶芸家として活躍中だとか。「彼女は作陶に対する姿勢が大変真面目なので、大いに参考にしています。」とのろけます。

作業場も整理するのが苦手な吉田さんは、「几帳面な奥様に作業場を整理してもらって本当に助かっている」とのこと。こうやってお互いに作陶に向かう姿勢やデザインなどを切磋琢磨できる関係は素晴らしいです。

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吉田さんの生まれは北海道。益子で学び、独立するのに、どうしてこの地を選んだのかお聞きしました。

「益子で陶芸を教えてもらったので、恩返しをしたいんです」

いきなり独立した吉田さんにとって場所はどこでもよかったはずですが、”恩返し”を一番の理由とされました。律儀な性格の方のようです。

益子という町を挙げて新しい陶芸家を育てようという温かさが、この町に陶芸家が集まるひとつの要因なのかもしれませんね。

いま目指す作品は「気持ち悪いもの」?

自宅にはアクアリウムの水槽が3つあります。アクアリウムとは水草などで、水槽に素敵な景色を作り出す趣味です。「この辺でも、材料が買えるので2・3年前からなんとなくはまっています」。これが、吉田さんの美意識の磨き方なのかな。すると今後は癒されるような作品をお作りになるのでしょうか?

「いま作りたいのは”なんか気持ち悪いもの”。この前の2月の個展では、いい具合に気持ち悪いのができてよかったなあ」

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(出典:やまに大塚スタッフMのブログ

えっ? 気持ち悪いものって、どういうことでしょうか。「ドクロとか。そういう、なんか気持ち悪いものが作りたいです」とおっしゃいます。ドクロの酒器は見せてもらいましたが、全部ドクロになっちゃうのでしょうか。4/30(2017年)まで益子の「やまに大塚」で開かれていた個展では、釉の境界がジワリと垂れている作品がありました。この感じなのかもしれませんね。

なんだかつかみどころのない吉田さんですが、ちょっと斜に構えつつ、不思議な魅力のあるうつわを生み出す彼の活動に、今後も注目したいです。

作家名:吉田 丈
住所:栃木県芳賀郡益子町前沢906−6
フェイスブック:https://www.facebook.com/profile.php?id=100002220858869&ref=ts&fref=ts

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○吉田丈 略歴

1980  ・北海道生まれ

2003  ・宇都宮大学卒業

2007  ・栃木県窯業技術支援センター終了

・益子町にて独立

2010  ・益子陶芸展 入選

・県展(栃木県)奨励賞

2010年より陶イズム実行委員として活動

 

(取材・写真テーブルライフ)