うつわの産地文化と歴史九州地方 | 肥前吉田焼
肥前吉田焼

【肥前吉田焼特集】その3・224porcelain 辻諭さん

January 11, 2018

注目の肥前吉田焼特集その3!  224porcelain(にーにーよんぽーせりん) 辻 諭(つじ・さとし)さん

「肥前吉田焼」に大注目!ブレイク寸前の注目窯元に密着取材

肥前吉田焼(ひぜんよしだやき)は有田焼で有名な佐賀県・有田町から車で30分ほどの佐賀県・嬉野(うれしの)市を中心とした焼き物の総称です。焼き物だけでなく、日本三大美肌の湯「嬉野温泉」と「嬉野茶」も全国的に有名で、工場のまわりにはお茶の段々畑が連なっています。

有田をはじめたくさんの産地が存在する肥前地区の中で、古くから日常生活で使ううつわを作り続けている産地。「有田焼」などと異なり、形や様式などこれといった特徴はありません。唯一の特徴は、日常生活に根ざしたうつわを作ること。その精神は今もこの地に受け継がれており、14ある窯元それぞれが思い思いに「今の生活」のためのうつわを作り続けております。


嬉野のトップランナー

そんな嬉野市・肥前吉田焼の中でめざましいご活躍を続け、トップランナーとして走り続けるのは、1979年生まれの今年38歳になる辻諭さん。

-窯元のことを教えてください

もともと有田において御用焼を営む「辻家」の出として創業者・辻与介が約170年前の安政年間(1854~1860年)に佐賀県嬉野市に創業した「辻与製陶所与山窯(つじよせいとうじょよざんがま)」。私で(まだ代替わりはしていませんが)7代目にあたります。他の吉田焼の窯元と同じく、長きにわたり伊万里〜有田の商社を通じて注文された商品を製造する窯元、つまり下請けとして続いてきたため「肥前吉田焼」や窯元名は世の中に知られることはあまりありませんでした。


特徴がないのが特長・肥前吉田焼

-肥前吉田焼の特長というとどんなところですか?

地理的に佐賀の有田や長崎の波佐見に近いため、それらの下請けとして吉田の名前はあまり表に出ることなく、長い間その技術を影で磨いてきました。そのためいい意味でも悪い意味でも様式がなく、知名度が低いのが特長です(笑)。しかし真っ白なところに自由にブランディングできる強みでもあります。

-その肥前吉田焼のアイデンティティ確立に力を入れていらっしゃる。

波佐見ほどの生産量もないし、一方で有田ほどの技術力もない。そんな吉田焼が特長を出すにはどうしたらよいかずっと考えてきました。その答えのひとつがプロダクトデザインという切り口です。


ユニークさが生命線!ブランドのネーミングも超ユニーク

-224porcelainという名前はユニークですよね。

お察しの通り「224(ツジヨ)」というダジャレで決めました。○○窯とか○○製陶所という名前にしたくなかったので。でも数字だと海外でもそのまま読んで頂けるのと珍しい名前ですぐに覚えてくれるので結果的によかったと思っています。

-プロダクトデザインに活路を見つけたきっかけは?

実は大学を出てすぐに窯に入ったのですが、その頃は暗黒でした。8年間くらいは自動制御の窯が壊れてしまい、お金がなくて買うことができないので自分で温度管理をせざるを得ませんでした。

その逆境の中で、あまりにも待ち時間が多いことを逆に利用して3Dソフトの勉強をしたりしていたことが後で活きてきました。
作っても作っても儲からないし、自分の中に何も残っていないという悶々とする時代を過ごす中で、アリタポーセリンラボの松本さんにニューヨークでの展示会イベントに誘われました。

2010年にニューヨークへ展示に行ったときの辻さん(右から2番目)と松本さん(右) 出典:フードリンク http://archive.foodrink.co.jp/backnumber/201002/100223-3.php

そのときに美術館やMOMAストアへ立ち寄り強烈なインスピレーションを受けました。

それまでは伝統と技術の範囲内でしか発想していなかったものが「もっと自由に作っていいんだ、焼きものほど自由度の高いものはない」と考えるようになりました。

徐々に認知度が上がってくる頃に、まだはっきりしていなかった「軸」が決まってきました。それは「ひとりでも多くのお客様に使ってもらうこと」。そうなると日本だけでなく世界中の人々に使ってもらうためにコストやデザインの軸、色使いや質感などのパーツが一気に埋まってくるのを感じました。


職人からクリエーターへ。展示会へ出ることの素晴らしさ

水たばこ@224shop+saryo

-陶芸をしていて一番嬉しかったことは何ですか?

陶芸家がモチベーションを上げるのはこの2つのことしかないと思っています。ひとつは思い通りのものができたとき。もうひとつは自分の作ったものがお客様に見てもらって褒められたときです。

工房をご覧になっておわかりの通り、僕らの仕事というのは95%が単調作業です。身体はきついし、退屈だし、しょっちゅう心が折れそうになります。

でも展示会に出かけるようになって、お客様にお声を頂くようになったことで95%の単調作業も耐えられるようになりました。それまでは一個いくらで納品だけをする職人でしかなかったので。

-外に出ることで大きな収穫を得た。

嬉野にずっと籠もって作陶をしていると気づかないのですが、東京などの展示会に行くと他の地域の同世代から刺激を受けます。みんな不思議と同じ境遇(伝統に限界がある、後継者不足、このままではいけないなど)であることが多く、その中で頑張っている仲間として奮い立たされます。

-有田焼400周年事業はどのような影響をもたらしましたか?

ちょっと「元気」になりましたね。その前から韓国・中国・台湾・シンガポールと販売拠点をアジアには広げていたのですが、メゾン・エ・オブジェ、アンビエンテ、ミラノサローネとヨーロッパへ立て続けに出展することができました。「いつかはMOMAへ入れる」ことを目標にしている自分には非常にいい経験になりました。


「本物」をプロデュースする。本気のおもてなしから得たこと

-最近のご自身の変化があったことは。

嬉野には日本有数の美肌の湯「嬉野温泉」と同じく日本有数の「嬉野茶」そして「肥前吉田焼」という異なる3種の地域資源があります。

そこでそれぞれが一番高いクオリティを出したらどんなおもてなしができるのか、という試みを同級生の旅館の社長と一緒に企画をしたのが2016年からスタートした「うれしの晩夏」というイベントです。

出典:うれしの晩夏facebookページ  https://www.facebook.com/ureshinobanka/photos/

一流のシェフと一流の茶師と一流の陶芸家が最高の空間の限定16席・一食のためだけに作るメニューとうつわという企画です。これはお客様を感動させるためにプライドをかけた”戦い”であったと思っています。

このときの開発は本当にこだわりのぶつかり合いであり、これまでは「自分が使いたいもの」しか作らないというものづくりの根底にあったものが、料理・茶葉のポテンシャルを最大限に引き出すためのうつわ作りを手がけたことによってプロユースへの興味がわいてきたところです。


座右の銘「商品を長く作ること」

-今後はどんなうつわを作っていきたいと思っていますか

これは元・白山陶器の森正洋さんの言葉ですが、「大量生産とは一度にたくさんものを作ることではない。商品を長く作ることだ」という言葉が一番響いています。

流行に流されることなく、廃版にしないためのデザインはどうあるべきか、これを突き詰めていきたいと考えます。

-一方で嬉野という地域のブランディングにも相当力を入れられているようですね。

先ほど申し上げた通り、地域資源は豊富(温泉・お茶・うつわ)であるにも関わらず認知度は正直低いのが実情です。

昨年は商品化を前提としたデザインコンペを開催したり、5,000円で食器詰め放題のトレジャーハンティングの企画を仕掛けたり、いろいろなことで好評を頂いています。

嬉野に足りないものは人材育成商品開発力販路開拓の3点だと思っています。特に人材育成に関しては陶芸をやりたい人は全国にたくさんいる一方で後継者が不足している窯元もたくさんあるのが現状です。インターン的に週3日は窯元のアルバイト、残りの日は自分の作陶というようなやり方で嬉野の地に人を呼び込めないか模索をしています。

ー「肥前吉田焼デザインコンペティション」も辻さんが仕掛けられた

https://www.yoshidayaki.jp/category/event/designcompetition/

私だけの力ではありませんが、「吉田で何か面白いことをやろう」という発想で商品化を含めたイベントを仕掛けました。本気でやろうとすれば何でもできるし、それに必要な出会いというのが必ず招かれて来るんですよね。

-ずいぶん早急にいろんなことを同時にされているようですが

今は鉄道がない嬉野に5年後(2022年)に新幹線の駅が開通*します。ここが嬉野での最大のチャンスだと思っています。

この駅ができたとき、降りた瞬間にお客様にどうマジックにかけるのか。温泉・お茶・うつわの”嬉野3種の神器”が十分な魅力を備えてお客様を迎えるための準備をのこり5年で整えなければならないと思っているんです。

おかげさまで活動をしていることで様々な人が共感して頂き、徐々に大きなプロジェクトが始まりつつあります。まだまだ道のりは長いですが、頑張って参ります。

* 九州新幹線西九州ルート(嬉野市ホームページ)
https://www.city.ureshino.lg.jp/_14065/293.html

<工房のご紹介>

224porcelain office/studio
 843-0303 佐賀県嬉野市嬉野町吉田丁4074
 tel: 0954-43-9322
 fax: 0954-43-8219

<ショップ・カフェのご紹介>

224porcelainのうつわが買えるショップと嬉野茶や地元のランチ・夜はバーとしてお酒と水タバコが楽しめる「saryo」も運営しています。

224 shop+saryo
http://www.224porcelain.com/shop/ 
843-0301 佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙909
tel : 0954-43-1220
fax : 0954-43-1220

shop 2F  open   月~金 10:00~16:00
            土日祝 10:00~18:00
      定休日   水曜日

shop 1F  open   カフェ 土・日 11:00~17:00
            バー 金~日 21:00~24:00

 

[取材・編集 テーブルライフ編集部]