【有田焼窯元特集2】渓山窯〜蕎麦猪口(そばちょこ)の名窯

テーブルウェアフェスティバルまであと1ヶ月。東京ドームで出会える作品をテーブルライフでは事前に取材しました!テーブルウェアフェスティバルに訪れる方は必見です!

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「渓山窯といえば蕎麦猪口、蕎麦猪口といえば渓山窯」圧倒的な種類を誇る渓山窯

(有田のど真ん中、佐賀銀行前にあるギャラリーと陶山神社入り口近くにある工房)

渓山窯(けいざんがま)の代表取締役:篠原 祐美子(しのはら ゆみこ)さんにお話を伺うことができました。

渓山窯は初代:篠原龍一氏(祖父)、二代目&現会長:篠原康年さん(父)に次ぐ三代目の代。2017年は渓山窯にとって創業60周年の記念の年となりました。

-創業者はどんな人ですか?

有田町にある自然豊かな猿川渓谷の地で、ロクロ職人だった祖父・龍一によって創業されました。それから60年その時代に求められるうつわづくりに励んでいます。

曾祖父は火鉢のろくろ職人、祖父は9人の兄弟姉妹。男女問わずきょうだいそれぞれ有田焼と関わりを持ち、この産業を支えていたと聞いております。

初代の祖父の頃には料亭や宮内省に納める器も創っていたのですが、父のときに時代のニーズに合わせ少しずつ家庭用の器も作り始めました。もともと窯焼きのときに窯効率を考えたときにちょっとした隙間に入れるちょうどよいサイズのうつわが蕎麦猪口だったため、毎回の窯に必ず入っているものだったのです。この頃から渓山窯では蕎麦猪口が身近なものになっていきました。

-今や「渓山窯といえば蕎麦猪口、蕎麦猪口といえば渓山窯」と言われるくらい代名詞になっていますね。どういったきっかけで蕎麦猪口に注力されたんですか?

昭和59年に東京のある商社さんから「蕎麦猪口はあまり種類がないので全国各地から集めるのが大変だ」という相談を受けて「それだったらこの商社さんが集めなくても済むくらいのラインナップを揃えよう」と考えたのがきっかけでした。
ラインナップを増やすにあたり、先代(父)は九州陶磁文化館などに行って古き良き有田焼の柄を学び、さらにアレンジを加えて絵柄を創りました。特に古伊万里に代表される染付の蕎麦猪口に赤絵を入れたことに当時はとてもインパクトがあったと聞いています。さらには自分が大好きな魚などの絵柄も加え、伝統的な柄だけでなく様々な蕎麦猪口ができていきました。

圧巻のラインナップ。”売れ筋”はあるものの不思議と極端には偏らないそうです。

-そうやって増えていった蕎麦猪口の種類。渓山窯の商品点数はかなり豊富ですが、いったい何種類あるんですか?

絵柄は常に100種類以上。形状が10種類あるのでコード上は1,000種類以上の商品が存在しています。

父である会長がものづくりが本当に好きで、今は「作りすぎ!」とたしなめています。(笑)

当時は100種類かどうかわからないくらい、とにかくたくさん作っていました。今は100種類に絞って作っていますね。

-昨年(2016年)は有田焼400周年の事業があり、プロジェクトにも参加されたようですが。

強みである蕎麦猪口をブランド化していこうという試みにチャレンジしました。

-どんな作品ができたのですか?

「PREMIUM CHOCO」というシリーズで、ありとあらゆる製造工程や原材料にこだわったワンランク上の蕎麦猪口を作る試みです。

・厳選された陶土
・生地は伝統工芸士によるろくろ成型
・伝統の絵柄
・桐箱

近年いろいろな技法や絵柄が広がっていく中で、本当に「ちゃんとしている有田焼」を見直すこと。すなわち、こだわり抜いた原材料を手間暇かけて作った本物の魅力を伝えていくこと。
「古い時代のものの形を借りて進化形をつくる試み」で使う人の想像力を喚起し、世界でも使われる器を目指しています。

そして、このようなブランドのコンセプトを伝える際にこのようなカードを作ってお客様にお渡ししています。

うつわに絵付けされた紋様の意味や有田の伝統を引き継いでいるものであることをわかりやすく伝えるのにとても役立っていて、おかげさまで評判もいいんです。このカードのイラストも実際に絵付けをしている職人さんに描いてもらっています。このようなかわいいカードをつけることによって、コレクション性も高まってきますよね。

うつわの紋様の意味を知らずにお使い頂いている人にも、このカードで「日々使っているうつわの紋様の意味を知れば、もっと生活が豊かになる」ということを伝えたいです。

渓山窯の経営理念に基づいて

「渓山窯はあなたのくらしを「心地よく」します。」
http://www.keizan-shop.com/hpgen/HPB/categories/104108.html

-今後の渓山窯はどうしていきたいと考えていますか?

基本は既存製品のリブランディング(Re-branding)をしていきたい。
上記の経営理念に通じますが「商品を作るのではなく生活スタイルを作る」。生活スタイルの提案を通じてお客様の暮らしが「心地よく」前向きになるようにと願っています。そのために常に新しい伝統を求めてライフスタイルに合わせたものづくりをしていきたいです。

全く新しいものを作っていくより「今あるものをどういう風に活かしていくか」を考えることの方が楽しいんですよね。

これまで父が次から次へと新しいものを作ってきたのですが、「とりあえず作る」はもうやりたくない。せっかく作ったのに、一生懸命売らないのはうつわがかわいそう。作るだけ作って育てないのは”育児放棄”ですよね。大事にうつわを育てていかなければいけないと思うんです。

ー蕎麦猪口だけでなくいろいろなうつわも取り揃えていますね。

蕎麦猪口をメインにしながら(広告塔にしながら)、ライフスタイルの提案に繋げられるような商品を提案するようにしています。

昨年4月に作った新しいカタログには商品の写真と価格が載っているだけでは伝わらないと思い、「このようなコンセプトでものづくりをしています」というメッセージを添えて作りました。

今後もお客様への伝え方はいろいろ考えていきたいと思います。

ー最後に工房の様子を見学させてください。

渓山窯(けいざんがま)
http://www.keizan-shop.com/
https://choco-keizan.stores.jp/

【うつわ処けいざん】
〒844-0005 佐賀県西松浦郡有田町幸平1-1-3
TEL:0955(43)4533
【渓山窯工房】 
〒844-0004 
佐賀県西松浦郡有田町大樽2-3-12 
TEL:0955(42)2947 
FAX:0955(42)6390
e-mail:post@arita-keizan.com

渓山窯は「通販で買えるオススメ有田焼窯元10選」でも掲載させて頂きました!

[取材・編集 テーブルライフ編集部]

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