【有田焼窯元特集4】厚さ1mm以下「エッグシェル」やま平窯元

テーブルウェアフェスティバルまであと2週間強。東京ドームで出会える窯元をテーブルライフでは事前に取材しました!テーブルウェアフェスティバルに訪れる方は必見です!(やま平窯さんは「有田焼」ブースにいらっしゃいます)

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大注目!厚さ1mm以下「エッグシェル」やま平窯元

春ほどは熱気に包まれていない有田秋の陶磁器まつりの最中に、エッグシェルシリーズで有田焼の中でも圧倒的人気で存在感を増している「やま平窯元(やまへいかまもと)」の山本博文(やまもと・ひろふみ)代表にインタビューをさせてもらうことができました。

やま平窯元は有田駅から徒歩で約10分ほど、有田駅と上有田駅の間にある踏切からまっすぐ南に県道を渡ったすぐのところに工房とギャラリーがあります。

ギャラリーは2017年7月にオープンしたばかりのピカピカな展示スペース!
なんとこのギャラリーの裏に工房があるのですが、本当に製造現場が隣にあるとは思えないような静かなギャラリーです。

-創業者はどのような方で、山本さんは何代目になりますか?

やま平窯元は法人化してから数えると創業45年(1972年有限会社化)ですが、もともとは戦後まもなく祖父(山本平作)が「山平窯(やまへいがま)」を立ち上げたものが母体になっています。有田焼窯元「山庄窯(やましょうがま)」に次男として生まれた祖父が独立したものです。

その後祖父と父が別の共同事業に参画した後に改めて法人化し直した経緯もあり「何代目」というのが数えづらいのですが、曾祖父から数えれば私が3代目、会社としては2代目社長という感じになります。

業務用食器卸としての歴史

-窯元の特徴を教えてください。

有田の窯元はほとんどそうなのですが、旅館やホテルの食器を卸すことでずっと伸びてきた産地です。やま平窯元も元々は東北・北海道向けの業務用食器の製造し、有田の地元の問屋さんに卸すいわば”製造専業”の窯元でした。

東北地方の特長として、どちらかというと煌(きら)びやかで大ぶりな食器が好まれ、1000人収容というような大型ホテルからの大ロットの受注生産が多かったです。機能性つまりスタッキング性のよいもの・厚いもの・丈夫なものというニーズにお応えして食器を量産してきた歴史がございます。現在でも製造量の半分はまだ業務用に卸しているんです。

自社ブランドの構築

-業務用中心だったのですね、ちょっと意外です。現在のラインナップを始めたのはどんなきっかけがあったんですか?

はい、窯元の歴史のほとんどを今述べたような業務用だけでずっと生産してきたわけですが、6年前(2011年頃)から現在のような一般向けの自社ブランド化をスタートさせました。

ブランドを展開していく上で地元の問屋さんには卸さず自社での展開にこだわっていくことを決めました。したがって開発・製造だけでなく、それまで全くやってこなかった東京をはじめとした各地の展示会や個展などに出て行くことで、独自に販路を作ってきたのがこの6年ですね。

逆に言うと、6年前までは自社の名前で食器を売ることはしたことがなく、表舞台に「やま平窯」の名前が出ることはありませんでした。

 

-その6年前には何か大きなことがあったのでしょうか?

いや、実は何か特別なことがあったわけではありません。(笑)

有田の業務用食器の受注は平成元年をピークに(今もなお)下がり続けており、経営者としてずっとどうにかしなければいう気持ちをずっと持ち続けていたところがありました。ずっと思い続けていたことを始めたのがたまたまそのタイミングだっただけですね。

-商品を売り始めたのが6年前ですか?

そうですね。それまでもかなりの期間コソコソ商品開発をしていたり、そのやり方を探し続けていたりしていたのでどこでスタートしたってなかなか定義しづらいのですが。

最初のシリーズはオランダ・フランス・イタリアシリーズ。

それまでずっと地方の商社さんとのお取引だったのが、あるとき東京の商社さんとお付き合いする機会を頂きまして、都内の再開発に関連した外資系ホテルの仕事が増えました。

その中で今までと異なる「プチリッチ」というジャンルの商品を開発に携わり、業務用ではなく家庭用にいい商品が提供できるという手応えを感じ始めていた時期でもありました。

デザインは自分で

-デザインは外部のデザイナーさんなどに依頼されているんですか?

全部私です。

デザインの専門家でも何でもないのですが。。。

高校を卒業した後東京の大学(経済学部)を出て1年間だけ京都の焼き物の販売会社で働き有田に戻りました。

ほんの数ヶ月だけ県の研修施設にも入りましたが、デザインや陶芸は特に技術を身につけたことがないです。

 

そのため、デザインのアイデアを求めて東京・大阪・京都の専門店やギャラリーなどへ年に数回は足を運んで感性を磨いていました。

最近こそインターネットが発達して情報収集が楽になってきましたが、ずっと足で情報を稼いでいましたね。

エッグシェルシリーズ

-やま平窯といえば厚さ1mmにも満たない薄くて軽い「エッグシェル」シリーズですよね。誕生秘話があればぜひお聞かせ頂きたいのですが。

画像出典:やま平窯元ホームページ

7年前(2010年)の香港での飲料の展示会に出展することが決まっていたときに、フッと「これを薄くしたらおもしろいのでは?」と思いついたのがきっかけです。もちろん、それまでいろんな試作をしてノウハウを貯めていた流れはあったのですが。

ちょっと作ってみたら思いの外いきなりうまくできてビックリしたのですが、その後の商品化にはかなり苦労しましたね。強度だったり透光性だったり生産への落とし込みだったりという点で、今までの焼き物の概念が通用しないんです。

-このコンセプトの売り出し方で意識したことは?

当初から地元の問屋には卸さないで行こうと決めていたので、ネットはかなり意識しましたね。自分でどうやって販路を切り拓くかを考えていったときにネットにチャンスがあると思いました。

ネットも当然簡単ではないはずですが、「分母と分子」でいえば、分子が小さくても分母を限りなく大きくすればいいという考え方でした。

積極的な行動が助けと出会いにつながる

-とはいえ、ネットでのマーケティングはご苦労があったのでは?

いやそれが、まずホームページを作ってみたらメディアに食いついて頂いて、比較的狙い通りに情報が拡散してくれました。

あとは有田焼創業400周年(2016年)も意識はしました。なんだかんだ言って(やま平窯に限らず有田全体で)メディアが取り上げてくれることも期待できましたからね。

-マーケティングの戦略がばっちり当たったのではないですか?

うーん、というよりも自分で積極的に動いていたらいろいろ助けて頂いたり素晴らしい出会いを頂いた、と言うのが実感ですね。

仕事のやりがい

-山本さんご自身は有田に戻られて何年になるんですか?

戻ってきたのは33年前になりますね。(実は山本社長は56歳。お若い!)

私自身は東京の4年制大学(経営学部)を卒業し、京都で食器販売の仕事に1年だけ就きました。あっという間に33年です。

-ということは、25年以上の長きにわたり業務用一筋、世にやま平窯の名前が出ない時期をお過ごしだったわけですね。

そうなりますね。業務用の卸なので、世の中の景気に左右され続けるだけの結構苦しい時期がありました。

-その時期からすれば、自分たちで商品をプロディースしてお客様にも喜んで頂いて、メディアにも取り上げられるのは楽しくて仕方ないのではないですか?

はい、やはり「社運を問屋と景気動向に預けて待つ」というのは精神衛生上よくないです。

休みはなくなってしまいましたが、全部自分の責任で結果が出る今はとても楽しく過ごせています。

写真:オープンしたばかりのギャラリー

有田焼創業400周年を終えて

-有田焼創業400周年はどのように関わられましたか?

私自身は3つのプロジェクトに関わったのですが、一番大きかったのは「プロユースのよさを海外に発信していこう」というプロジェクトの反響があったことですね。

「有田の技術や素材を活かして洋食器を作る」というプロジェクトで、狙いはプロユース=業務用だったのですが一般の方にも結構ご購入頂きました。

-有田焼創業400周年が終わっていかがですか?

どこも同じだと思いますが、昨年の盛り上がりで売り上げた分、揺り戻しがあって数字が厳しいですね。

-今後もっとこういうことをやってみたいということはありますか?

来年二人息子のうちの次男が戻ってくる予定になっていて、少しずつ引き継いでいく体制を作りながら新しいこともしていきたいと考えています。

オフの日は・・・

-休みの日はどうされているんですか?

休みはないです(笑) 特にギャラリーを始めてからは全く休んでないですね。

もし時間があれば、大学のときからやっていた(今はやめている)ゴルフを再開したいです。

有田焼窯元 やま平窯元

〒844-0012 佐賀県西松浦郡有田町桑古場乙2267−1
公式ホームページ: http://yamaheigama.co.jp/
オンラインショップ: http://yamaheigama.com/

[取材・編集 テーブルライフ編集部]