フラッグス・福珠窯 福田雄介さんインタビュー
伝統とモダンを追求し続ける有田焼窯元集団の「フラッグス」。こちらの特集記事で結成秘話から今後の活動についてレポートさせて頂きましたが、今回は福珠窯(ふくじゅがま)福田雄介さんにフラッグスの活動と作品の誕生秘話について、詳しくお話を聞いて参りました!
実は過去にもテーブルライフでは福珠窯・福田さんを取材・特集したことがございました。
過去の記事:【有田焼窯元特集5】福珠窯 福田雄介さん(2018年1月公開)
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「フラッグス」への合流
−福田さんは「つたう」プロジェクトの1期生で残りのメンバーとは異なる経緯でしたね。
はい、そもそも「つたう」プロジェクトの1期生の中でも自分自身が初めからではなく、プロジェクトの途中から父から引き継いだんですね。実は2013年に会社員を辞めて工房に戻ってきた関係で、それから1年たったくらいのタイミングでいろいろなプロジェクトを引き継ぎました。
最初の1年だけ父がプロジェクトに参加していて、残る2年を私が担当しました。
−「つたう」プロジェクトで開発された商品は?
まず父のときに「IKOMI」シリーズが開発されました。こちらの商品は一般向けというよりはレストランなどの業務用向けだと考えていました。自分としては一般向けに商品開発をしたい想いもあり、もう一つのシリーズの銀彩のうつわを開発していった経緯があります。
(写真)「IKOMI」シリーズでコーディネートした事例
(住宅展示場コーディネートのコラムはこちら)テーブルライフストアでお取り扱いしています!
たどり着いた「銀彩X染付」の結論
−そして2つめのシリーズとして開発されたとてもスタイリッシュな銀彩のうつわ。今のデザインに行きつくまでに苦労した点は?
もともと福珠窯で人気のあったデザインを現代風にアレンジする、というコンセプト自体はプロジェクトで議論する中ですんなり出せた結論でした。
人気のあったデザイン、という意味で絵柄の候補6種類を決めました。ですが、そこにどうやってシルバーを組み入れたらいいか、試作を相当重ねました。
(写真)後ろの3商品が従来の福珠窯の商品、それをモチーフにしたデザインの銀彩シリーズ。
まずデザイン数はクラシックライン3種・モダンライン3種として、購買者が迷わないためにも合計6種類にとどめました。
クラシックライン:伊万里牡丹、丸紋、ぶどう蝶
モダンライン:チェック(市松)、ボーダー(独楽筋)、ストライプ(十草)
模様の選択には割とクラシック色の強いもの3種選びました。海外のお客様を意識して、モダン3種は日本の柄としても洋の柄(チェック、ボーダー、ストライプ)としても名前があるもの。モダンとは言っても伝統の香りを共存しているものにしたかったからです。
−確かにクラシックなデザインが残ったままモダンな作品に仕上がっています!
このデザインに至るまでは結構試行錯誤を繰り返しました。例えばこちらは試作品ですが、濃い染付と薄い染付をミックスしたことでキュートなイメージになってしまったため銀彩を施す前に失敗作としてやめたんです。(写真:右手に持っているものが試作品)
あとは内側に線を入れるかどうかも悩みました。
内側に線を1本入れると一気に和の雰囲気になり、デザインとしてはすごく締まるのですがクラシックな印象が強くなります。わかりやすく言うと、一気に“そば猪口”感が強くなってしまいます。(笑)
オリジナルのモチーフには線が入っているので、最後まで入れるか悩みましたが最終的には外しました。このような線一本・ちょっとした濃さなどの「成分」と「香り」の微調整は一番苦労しましたね。
2018有田国際陶磁展・産業陶磁器部門の経済産業大臣賞受賞!
−そんな中、嬉しいニュースがありましたね!2018有田国際陶磁展・産業陶磁器部門で最優秀にあたる「経済産業大臣賞」を受賞されました。
賞を獲ったプレートに行きつく発想に至ったのは「つたう」からずっと流れがあって、それの1つの集大成みたいなものでした。
開発をして行くにあたり、裏テーマというかコンセプトがありました。
一般的に色が入っているのは明治期の柄(金襴)ですが福珠窯は初期伊万里(染付&銀彩)。我々は江戸時代の風合いの窯元。絵柄=明治時代、風合い=江戸時代。この時代差が新鮮で面白いと思ったのです。
そこからさらに踏み込んで、和のプレートではなく洋のプレートを提案しました。この作品の絵柄は明治時代、風合いは江戸時代、形状はヨーロッパ(洋)。
ボーダレスな今の時代を象徴するような1つの作品に仕上がったと思っています。
「心地よい違和感」を
何か違和感を感じつつも目を引く、自然に目に入る。しっくり感もある。そういう「心地よい違和感」がモダンなデザインには必要なんだと気づきました。
「モダン」を追求すると本当にすごく難しいと感じます。ベースにクラシックがあってこそのモダンであり、単なる「シンプル」とはまた違うんですよね。テーブルライフストアでお取り扱いしています!
「フラッグス」への参加をきっかけに
−フラッグスの活動に大変驚いたと伺いました。
初めて参加したときはすごい衝撃を受けましたね。たまたま誘われた際の空気感に圧倒されてしまいました。なれ合いとはまた違う独特の緊張感がありました。このようなピリッとした空気感の方が心地よく感じています。
実際に、ときどきミーティングに参加するゲストの方が意識の高さに驚きます。昔は手の打ちを見せないのが暗黙の了解だったので、こんなにオープンで何でも熱く語れるグループは私自身も見たことがないですね。
先日コンテストで最優秀賞を頂いたときもそうですね。フラッグスではテストマーケティングの一環としてコンペに出品すると決めているのでメンバー全員が出品しているのですが、メンバーからはお祝いの言葉は頂きましたけど「本音は悔しいよ」と言われました。このメンバーの間だと気を遣うとかえって逆効果なんです。
−フラッグスの活動は具体的にどんな感じなのか?メンバーと一番よく話すことは?
プロダクト単体のことはほとんど話すことはありませんね。
「あなたはその製品で何を伝えたいのか?」「何を考えてアウトプットしたいのか?」を突き詰めます。皆真剣に器づくりに情熱を注いでいる仲間だけあって、中途半端な考えこれを伝えようと思っても通用しません。
物に対するアドバイスをもらうのではなく、自分が考えている方向性を聞いてもらうスタンス。アドバイザーとして、promoductionの浜野貴晴さん(佐賀県窯業技術センター 外部アドバイザー)に入っていただいているので、デザインや流通のアドバイスをもらいます。その上で作り手としての考えや設備・技術などは窯元同士で意見交換し合っています。
フラッグスに参加し、勉強会を話し合いを重ねることで思考がどんどん深くなります。
−フラッグスで共同制作みたいなことはされないのですか?
今後7社で同じものを作る予定はないですね。あくまで各窯元の個人活動の一環。得意分野がそれぞれ違うからこそお互いが切磋琢磨しあうことで、第3者の目から意見交換できるところが長所だと思っていますので。
江戸時代から続く「染付と銀」が福珠窯らしさ
−最後に、福珠窯とフラッグスの今後について教えてください。
よく聞かれるのですが、カラーバリエーションを増やす方向性はないですね。確かにモダンでカッコイイかもしれませんが、個人的にはメッセージ性が伝わってこない気がしています。江戸時代から使用されている銀彩と福珠らしい染付を組み合わせたシリーズを新しい作風として大事にしていきたいので今後も変えるつもりはありません。
考え方として、お料理との調和は自然界にある色かどうかで決まると思っています。基本的に青は食欲減退色です。なのに有田の青は天然物(コバルトという鉱物)。構成されるものが全て天然物であり染付の青は特別なもの。だから料理にも馴染むんだと思います
またフラッグスの活動をもっとオープンな市場に投げかけることもやってみたいです。(テーブルウェアフェスティバル出展などが代表例)
自信を持って作ったものをどうやって多くの人たちに見てもらるようにすればいいか、自分たちの技術を見てもらえるか。何を考えて生み出したのか、を知ってもらいたい。展示会に出展するのではなく、フラッグスとして場所を借りて出展したいなと考えています。
※テーブルライフではフラッグスの活動を逐一発信していきます!
福珠窯(ふくじゅがま) http://www.fukujugama.co.jp/ 〒844-0002 佐賀県西松浦郡有田町中樽2丁目30−16 0955-42-5277 オンラインショップ https://store.shopping.yahoo.co.jp/fukujugama/
[取材・編集 テーブルライフ編集部]
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